【一般無料】微生物と生きてきた日本人(健康基礎講座)

・独自の氣候が生み出した食文化

・なぜ脂が無くても美味しいのか。

・偶然が生み出した美味しすぎる産物

この国では四季が移り変わるので、常に変化していくことを目で楽しむことが出来ます。

これから迎える季節を待ち遠しく思い、過ぎていく季節には名残りを感じる。
そのような繊細な想いは、昔より歌にも詠まれてきました。

今では和食は世界でも優れた食文化として認められていますが、独自の食文化は日本の氣候風土と密接に関わっています。

日本では雲が多く見られ、それが雨に変わり大地を潤します。

日本列島の降雨量は年平均で約1800ミリと、世界的に見ても非常に雨がよく降る土地です。
世界平均は約970ミリなので、その2倍にも相当します。

日本は水が豊富な国だったことから、それを利用して稲作文化が広がりました。

世界の先進国の中でも日本のような温帯湿潤の氣候の国は珍しく、湿度は年平均で65%もあります。
フランスは30%余りなので、日本の約半分程度です。
それぞれの国で食文化や生活環境などが全く異なるのは、こうした氣候も影響していると思います。

温帯湿潤の氣候の中で、日本人は昔より菌類と上手に付き合ってきました。

カビの害を少なくするため、障子や畳を使った住まいを作りました。
着物や下駄も通氣性を良くして、一年を通して快適に暮らせるよう工夫がこらされています。

一方では菌類の働きを利用して、味噌、醤油、酢、納豆、日本酒などの発酵食品を作り、脂肪を使わなくても大変美味しくヘルシーな料理へと展開し、和食を支える柱になっています。

寒い季節になると飲まれる甘酒も、日本が誇る発酵食品です。

江戸時代には胃や腸の健康を守り、夏バテの予防として甘酒は夏によく飲まれていました。
麹菌や酵素が豊富なため、暑さで食欲が落ちて弱りがちな消化器の免疫力を強化してくれます。
今でも東京の下町では、夏に甘酒をふるまうお店が残っています。

昔よりお正月やひな祭りといった年中行事や、子どもが主役のお祭りにも甘酒を飲む習慣がありました。

「ここまでおいで、甘酒進上」は、よちよち歩きの赤ちゃんの足腰を丈夫にするために親が愛情をこめてかけていた誘い言葉です。

子どもにも好まれる優しい味の甘酒は、消化不良のほかにも食中毒や伝染病への免疫力をつけてくれます。
昔は乳幼児の死亡率が高かったため、我が子が元氣に成長するよう親が願って甘酒を作りました。

甘酒は「飲む点滴」とも言われ、ブドウ糖やアミノ酸、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれています。

発酵食品は多彩な味わいを作り出し、大人から子どもまで幅広く食べられてきました。

その発酵食品と共に和食を支えているのが出汁です。
出汁のうま味は他の味を引き立てるのと同時に、料理全体の味を高める役割を果たしています。

和食に使われる出汁の中でも代表的なかつお節も、発酵を利用して作られています。

かつおの身には元々脂が含まれていますが、かつお節で出汁をとっても脂は浮いてきません。
それは何故でしょうか?

かつお節は麹菌を用いて作られるのですが、その過程で脂が酵素によって分館されてうま味成分に変わるためです。
麹菌によって脂よりもコクのあるうま味が醸し出されているのです。

脂を摂り過ぎることなく、かつ美味しい食事ができるのは発酵食品や出汁のおかげと言えるでしょう。

洋食や外食、加工食品などは脂をたくさん使って一生懸命美味しくしようとしていますが、脂をさらにおいしいうま味成分に変えてしまう菌の働きには脱帽してしまいますね。

稲作文化が栄えた日本ですが、米を収穫した後に残った稲わらも無駄にはしませんでした。

わらじ、笠、みの、御座など生活用品に変えて有効活用していました。
稲わらから作られた苞(つと)と呼ばれる容器は魚や海藻、山菜やいも類などを持ち運ぶために用いられていました。

さらに畑に稲わらを敷くと雑草をよけ、日よけ、土の乾燥予防、泥はね防止など用途が多くて、とても実用的。
しかも自然に還る天然素材ですから、一石三鳥にも四鳥にもなりますね。

それだけではなく朝食に欠かせない納豆も、もともとは稲わらを使って作られていました。
というより、稲わらが無ければ納豆の誕生はありえなかったのです。

稲わら1本には約1000万個の納豆菌が胞子の状態で付着しています。
納豆菌は高温多湿を好み、保温保湿力に優れる稲わらの中は納豆菌にとって非常に住み心地が良い所なのです。

束ねた稲わらの中に煮豆を入れると、わらの中で眠っていた納豆菌が突然目を覚まします。
タンパク質を分解するプロテアーゼをはじめとした様々な分解酵素を出して、煮豆のタンパク質をアミノ酸に分解し、それをエネルギーにしてどんどん繁殖していきます。

すると粘りのある糸を引くようになり、納豆が出来上がります。

お米を収穫した時に残った稲わらと煮豆から納豆が作られ、お米と一緒に食卓に上がる。
菌のおかげで、見事なまでに循環した食文化が築かれてきました。

納豆は偶然発見されたと言われていますが、苞のような稲わらに煮豆を保存したとことから偶然が生まれたと考えられています。

その昔、日本は「瑞穂の国」と呼ばれていました。
みずみずしい稲穂が豊かに育つ土地という意味を表しています。

また、お米と相性が良い食材に恵まれた土地でもありました。

温帯湿潤の気候が菌類が繁殖しやすい環境を作り出したおかげで、日本の至る所で「発酵」が行われてきました。
先人はその力に氣づき、食文化に取り入れました。

玄米に味噌や醤油、納豆など発酵食品を合わせたり、出汁を取り入れた料理を添えると、感動するほど美味しく感じることがあります。

手の込んでいない組み合わせでも立派に食事が成り立つのは、発酵に関わる菌類のおかげです。

まるで魔法にかかったかのような美味しさの秘密は、人智の及ばないところにあると昔の人は思っていたはずです。

家庭で作る料理も飽きずに美味しく出来るのは発酵食品の旨味によるもので、それは菌類が施す神業です。

和食を食べ続けると、誰もがこうした美味しさに氣づくと思います。
人工的に作られたうま味調味料ではなく、発酵食品のうま味を美味しいと感じる味覚に戻す事が健康への近道ですね。

山本 和佳

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