・肉を食べると力がつくという誤解
・肉を食べないトップアスリート達
・昔の日本人も強かった
暑い夏を迎えて「スタミナをつけよう!」と体を氣遣うのは大事ですが、
世の中のほとんどの人は、スタミナ食と言うとお肉を連想すると思います。
しかし、それは大きな誤解です。
肉食はスタミナをつけるどころか、むしろスタミナを奪ってしまいます。
「肉を食べてスタミナをつける」という誤った情報が一般的に受け入れられてしまったのは
学校教育、テレビなどからの刷り込みやイメージ洗脳によるところが大きいです。
学校の給食で肉が出され、授業では「肉は重要なたんぱく源です」と教え込まれます。
家庭でも食事に肉が出るし、栄養士も学校で教えている栄養学の知識を入れるので
「肉を食べましょう」と言います。
テレビ番組は「肉を食べる=強い体」というイメージを植えつけます。
例えば、アスリートが美味しそうに肉を食べている姿を見たら、
視聴者は「肉を食べると体が丈夫になるのだ」と信じてしまう。
子どもの頃から「肉を食べなくてはいけない」と刷り込まれているので、無理もありません。
しかし、事実を1つ1つ冷静に見ていくと、決してそうではないという事が分かってきます。
●肉がスタミナを奪う
人間の体は肉を食べるようには出来ていないため、肉を食べてもなかなか分解・吸収できず、
多くの酵素が無駄に使われてしまうと共に、体内のビタミンやミネラルも失われます。
酵素は食べ物の消化・吸収だけでなく、臓器の働きや体が行うあらゆる活動に関わっています。
そして酵素の働きを助けているのがビタミン・ミネラルです。
肉を食べ続けていると、必然的に体内はビタミン・ミネラル不足になってしまいます。
それによって酵素の働きが低下するため、体内で行われる代謝、栄養吸収、解毒、排泄機能も
低下して、体はだるく疲れやすくなります。
体内のビタミン・ミネラルの無駄遣いをしないためには、まず肉を止めること。
そしてビタミン・ミネラルを食事からしっかり摂る事が大切です。
玄米、野菜、海藻、豆類、発酵食品などは体を支える栄養が含まれ、
それが消化吸収も助けている点も忘れてはなりません。
●玄米菜食が支えた大きな功績
運動量の多いスポーツ選手こそ、肉を食べてスタミナをつけていると思っている人は多いかもしれません。
しかし、それもテレビなどで作られたイメージで、確たる根拠はありません。
それを証明するののが、肉を控えて輝かしい結果を残した選手です。
1982年にパ・リーグの西武ライオンズに広岡達郎監督が就任した時、
選手に自然食の食事指導をするという事が当時話題になったそうです。
化学調味料を使わず、天然のみそや醤油が使われ、主食は玄米が中心で
野菜や魚を副食にしました。
開幕前のキャンプの時には煮豆、きんぴら、梅干し、らっきょうなどが食卓に上がりました。
そして肉は控え、たんぱく質は豆類、豆腐、豆乳、魚から摂るという食事を
合宿所や選手の家庭で徹底されました。
食事改革を行った西武ライオンズは試合に勝ち続け、その年の日本一に輝きました。
風邪を引く選手が少なくなり、けがをする選手は12球団の中で最も少なくなった事も
勝利に大きく貢献しました。
広岡監督は在任4年間のうちパ・リーグ優勝1回、日本シリーズを2回制覇という
素晴らしい成績を残しました。
当時の広岡監督に育てられた選手の1人でもある工藤公康投手は
その後も自然食を実践して、47歳まで現役生活を続けました。
スポーツ選手の功績は日々の厳しいトレーニングによるところがもちろん大きいですが、
それに耐えて長く活躍するための体を支えるという意味でも
食事内容は選手生命にも関わるほど重要なものだという事が伺えます。
また、野球は暑い夏も試合がありますので、玄米菜食が暑さを乗り越える為に大切であり、
肉は夏バテ対策にならないということも証明されています。
●肉が筋肉を作るのではない
西武ライオンズの黄金期を玄米菜食が支えていたという事からも
「肉が筋肉隆々の体を作る」というのも根拠の無い嘘だと察しがつくことでしょう。
たんぱく質を摂り過ぎると、体に脂肪がつき過ぎてしまうのです。
それは、食べ過ぎて余ったたんぱく質が脂肪と糖に換えられて、体内に溜め込まれるためです。
黄金期の西武ライオンズの選手は肉を控えていましたが、
肉や動物性食品などたくさん食べていたプロスポーツ選手の中には
現役を引退してから、どんどん太っていくケースが多く見られます。
加齢とともに代謝が下がって、運動量も昔より減っているのに
それに対して食事量が多過ぎると、どうしても体重は増加します。
しかも肉食・動物性食品を摂り過ぎると血管や臓器の老化が早く進み、
動脈硬化、糖尿病など生活習慣病になってしまいます。
●肉を食べないトップアスリート達
世界で活躍するトップアスリートの中にも肉を食べない人がいます。
テニスプレーヤーのジョコビッチは現在世界ランキング3位。
今年のウインブルドンでは4連覇を目指してトーナメントを勝ち上がっています。
以前は年齢と共に疲れが増して、体調が良くない時も多かったそうですが、
食事管理を徹底するようになって、肉を止めました。
プレー内容が良くなり、試合中の注意力にも影響するなど
自身の勝利は食生活のおかげであると語っています。
サッカー界では、年間最優秀選手に贈られるパロンドール賞を
歴代最多の7度受賞しているメッシもベジタリアンで知られています。
昔は肉をよく食べていたそうですが、体のだるさなどがプレーの支障にもなっていたそうですが、
2008年頃に所属チームの食事指導によって肉を止めました。
2012年は69試合に出場して91得点を記録し、年間最多ゴール記録を40年振りに更新しました。
肉を食べなくなってから体調が軽く、疲れにくくなったというのは
ベジタリアンのアスリートに共通しています。
●日本人も強靭だった
まだまだ人間の体の底力に驚かされる話があります。
明治時代にドイツの内科医ベルツが来日した時の記録には、昔の日本人の強靭ぶりが紹介されています。
ベルツが東京から日光まで人力車ででかけた時のことです。
約110kmの道のりを2人の車夫が休憩をすることなく、
体重70kgのベルツを乗せて10時間30分も走り続けました。
これを見て驚いたベルツは2人の食事を調べてみると、脂肪やたんぱく質はほんの少しで、
ほとんどが炭水化物だったという事でした。
そこでベルツは彼らに肉を食べさせたところ、3日もすると「疲れてしまって走れない」と言われました。
そこで食事を元に戻すと、また元氣に走れるようになったのでした。
粗食と言われる食事が体に栄養を与え、丈夫で持続力のある体を作っている事がよく分かります。
丈夫で持続力のある体は、人生を通して大きな財産になります。
繰り返しになりますが、肉を食べてもスタミナが奪われるばかりで、
体がだるくて動きたく無くなれば、心身両面に不調が出てきます。
食事を狂わせる元凶でもある肉は食べず、玄米菜食を続ける事が大切です。
山本和佳