【一般無料】食べ物が心を作る(健康基礎講座)

・足りないと目の前のものに飛びつく脳

・肥満になると○○○○が鈍くなる


イライラ、不安、落ち込みは、起きた出来事や周りの人の言動によって
引き起こされていると思う人は多いかもしれません。

しかし、普段食べているものからも意外なほど多くの影響を受けています。

●足りないとやみくもに欲しがる脳

現代人は脂質の摂り過ぎが問題となっています。

脂質自体は必須営養素で体に必要なものですが、正しく適切に摂れていないのです。

動物は長い歴史の中で、飢えに耐えてきました。

余分なエネルギーを摂取した時は、それを脂肪として体に蓄えて、
飢餓の時にそれをエネルギーとして利用し、生き延びる術を獲得しました。

しかし、人類が予期していなかった飽食の時代が訪れた今、
エネルギーの過剰摂取と運動不足によって肥満が増加してしまいました。

揚げ物、パスタ、チャーハン、ラーメン、お菓子類、ファーストフード、その他様々な加工食品・・・

スーパーやコンビニ、飲食店へ行けば、油が入ったものがたくさんあり、知らないうちに摂り過ぎることもあるでしょう。

質の悪い油には依存性が強いものもあるため、食べても食べても、また欲しくなります。

この時に欲しがっているのは、腸ではなく脳の方です。

脳は営養が足りていないと、「油が足りないから摂ってください」と指令を出します。

しかし、脳は腸のように体に良くて摂るべき油なのか判断ができません。

現代では油を使った食べ物は、質の悪い油が使われていることが多いです。

しかし、脳はそれが分からないため、その辺にある揚げ物やラーメンなどを食べ、それで満足してしまいます。

本当に必要な油を摂ることが出来ず、脳の欲求に振り回されているような状態です。

脳内には、やる氣や元氣を感じさせる「報酬系」と呼ばれる脳内神経のネットワークがあります。
人間が日々活動するために大事な役割を担っている場所です。

例えば、がんばって結果を出して、さらにやる氣がわく。または褒められて嬉しい時も
脳内の報酬系では、やる氣を作り出すドーパミンが分泌されます。

日常の活動によって喜びを感じ、その活動がさらに強化されていく。

人間が生きていくために必要なしくみです。

しかし、この報酬系がむやみに活性し過ぎてしまうと、体とのバランスを崩します。

何かを食べて美味しいと感じたり、食べ物を見て美味しそうと感じる時も
脳内ではドーパミンが放出されています。

ドーパミンは脳内報酬物質とも呼ばれていて、多幸感や快感を得ます。

しかし、特に精製された糖分や質の悪い油を摂ると、血糖値が急上昇します。
すると、その後で今度は低血糖になり、糖を無性に欲しがるようになります。

この時、イライラしたり不安になるなど精神が不安定になりますが、
糖分を食べると再び幸せを感じたり、安心します。

甘いものを食べるのがストレス解消になっている人は、要注意です。

一時的なドーパミンの放出に頼っているだけで、根本的なストレス解消にはならないからです。

本来、ドーパミンは生きる意欲を作るという大事な働きをしていて、
例えば次のような時にドーパミンがたくさん分泌されています。

・「がんばろう!」と何かに取り組んでいる時

・スポーツや仕事をしている時

・好きな事に夢中になっている時

・試験に合格して喜んでいる時

・感動している時

何かに集中したり夢中になっている時は、空腹を忘れています。
ドーパミンがしっかり分泌されていると、空腹感を感じないため、ダイエットにも効果があります。

しかし、誤った食事によって大量のドーパミンが分泌されると、食べ過ぎに陥りやすくなるため注意が必要です。

精製された糖や脂質を食べた時にも脳内ではドーパミンが大量に分泌されると、
もっと食べたいと思うようになります。

精製された糖分は素早く血中に入ります。血糖値が急激に上がるという事は
多幸感も強く感じることになり、それが癖になって悪い食習慣を繰り返してしまうのです。

お菓子や揚げ物をやめられないのは、楽して報酬(ドーパミン)を得る行動を延々と繰り返しているからです。

●肥満の体内で起きていること

肥満の人は食欲をコントロール出来ずに食べ過ぎてしまいます。

誘惑に負けて、止めようと思っても止められない。
この時、体の中ではどのような反応が起きているのでしょうか。

2011年にアメリカのイエール大学が発表した研究では、
肥満者は脳内のブドウ糖の濃度が上昇しても、高カロリー食品に対する欲求が抑制されないと発表されました。

これを証明した実験では、被験者に高カロリー食品、低カロリー食品、食べ物以外の写真を見せて、
血糖値と脳内で起こる変化の関係について調べました。

その結果、血糖値が低下している時は、食べ物の写真に刺激されて、
脳内で食欲を喚起する線条体という部位から食べるように促す信号がどんどん出て、
前頭前野にある食欲抑制機能が失われました。

適正な体重の人は、血糖値が上昇した時や正常値の時(ブドウ糖が不足していない時)は、
前頭前野の食欲抑制機能は正常に働きます。

つまり、ブドウ糖が不足していなければ、それ以上糖分を欲しがることはないのです。

しかしこの実験で、肥満の人は血糖値が戻っても食欲を抑制できず、
特に高カロリー食品の写真を見た時は食べたい欲求を抑えられませんでした。

こうなると食欲のみならず、理性がちゃんと機能しなくなりますので、
食のみならず、生活習慣全体の質が低下していきます。

精製食品や加工食品がなかった時代は、
糖や脂質の過剰摂取が長期間続くことはありませんでした。

自分の体が求めているのではなく、脳が誤作動を起こして過剰に欲しがっている。

脳の暴走を止めるには、このようなしくみを知ることも有益だと思います。

抑えられないほどの食べたいという衝動は体の声ではなかったと分かれば、
「では、体は何を欲しがっているのか?」という考え方に変えていけるからです。

人間の体は自然の恵みを欲しがっています。

玄米、野菜、果物、豆類、魚、豆腐、納豆、味噌・・・

体が本来求めている食べ物は、依存を引き起こすことはありません。

複合的な営養を摂れるので、食べた後はゆっくりと分解・吸収されます。

血糖値はゆるやかに上昇して、また元に戻ります。

食後の体の状態は、ジャンクフードを食べた時よりも格段に体が軽いと感じるはずです。
そのため、仕事や日中の活動を邪魔しません。

食べ過ぎ、食べ間違いが常態化すると、様々な面で多くの無駄が出てしまいます。

・食べるために費やす時間が余分に増える

・食費がかさむ一方で、営養は不足する

・体内酵素の無駄遣い。体内のビタミン・ミネラルを失う。

・頭の働きが鈍くなり、テレビを見たりぼんやり過ごす時間が増える

・病院へ通う時間と治療費がかさむ

・寿命が短くなる

お金や時間の無駄に始まり、最後は命を縮めてしまいます。

玄米菜食に変えれば、無駄を減らして必要な営養を摂ることが出来て、一石二鳥です。

食事の改善は、体に必要なものを食べるよう脳に教えるという行為でもあるのです。

山本和佳