【一般無料】油を適切に摂る(健康基礎講座)

・摂るべき油と控えるべき油

・現代人は○○○○〇過多

・〇が最もダメージを受けている


脂質にはいくつもの種類があり、摂るべき油とそうでない油があります。

脂質は必須栄養素ですが、脂質を一括りにしないで、有用な油を選択して摂ることが大切です。

まず、脂質は大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2種類に分かれます。

飽和脂肪酸は動バター、ラード、ヘット(牛脂)など物の油が多く、常温では個体です。

一方、植物の油には不飽和脂肪酸が多く、常温では液体です。

不飽和脂肪酸は、さらに一価脂肪酸と多価脂肪酸に分かれます。

<一価脂肪酸>
  ・オメガ9(オレイン酸) オリーブオイル、キャノーラ油、パーム油、ひまわり油など

<多価脂肪酸> 体内では作られない必須脂肪酸
  ・オメガ6(リノール酸) 大豆油、ごま油、コーン油など
  ・オメガ3(αリノレン酸、EPA、DHA) 亜麻仁油、インカインチ油、シソ油、青魚など

オメガ6とオメガ3は必須脂肪酸ですので、食事から摂り入れる必要があります。

しかし、オメガ6は外食や加工食品にも多く含まれ、現代人は過剰に摂取しています。

一方、オメガ3は知らないうちに体内に入ってくるという事はほとんど無く、
意識的に摂取しないと十分な量を摂ることが出来ません。

そのため、この2種類の脂肪酸の摂取量はオメガ6に偏っているのです。

では、オメガ6を摂り過ぎると、どのような問題が起きるのでしょうか。

フランス国立衛星医学研究所のマンゾーニ博士は、オメガ3の不足が脳神経のシナプス機構や
情動行動に有害な問題を引き起こすと発表しました。

マウスを使った実験では、胎児期からオメガ3が慢性的に欠乏しているマウスは、
抑うつ行動が生じて、報酬、動機と情動制御に関するシナプスの柔軟性が失われてしまいました。

ほとんどの人は、お母さんのお腹の中にいる頃からオメガ3が不足、または欠乏した状態で成長していきます。

脳内にあるシナプスは、神経伝達に欠かせない細胞間の通り道ですので
シナプスが上手く働かないということは、すなわち機能の低下を意味します。

それが脳の発達を妨げ、精神が不安定になり、感情のコントロールができないまま大人になれば、
満足のいく社会生活が出来なくなってしまいます。

また、脳内の報酬系が正常に機能しないと、強い依存に陥ったり、
または欠乏によって精神が不安定になります。

あらゆる行動の源となる動機が弱くなったら、生活における様々な活動が低下してしまいます。

うつ病の患者が増えたことと、脂質の摂り間違いは因果関係があります。

オメガ6は体内で炎症作用のある物質の材料になります。

これに対して、オメガ3は炎症を抑えて免疫力を強くします。

オメガ6とオメガ3の理想的な摂取量のバランスは4:1ですが、
現代人はリノール酸を摂り過ぎていて、何とオメガ3の10倍以上、または20倍になっているとも言われています。

また、オメガ6を摂り過ぎると、アレルギー症状を引き起こしやすくなるとも言われています。

油は風味をつけたり、食べやすい食感に加工したり、見た目を美味しそうに見せるなどの効果があるため、
たくさんの食品に安価な油が使われています。

ケーキ、ドーナツ、クッキー、パン、揚げ物、パスタ、ピザ・・・・

これらの食品からオメガ6とオメガ9を大量に摂取しているのです。

現代人が積極的に摂るべきオメガ3は、外食やお惣菜のような出来合いのものには
ほとんど入っていないため、自宅に常備して食事に摂り入れる必要があります。

ただ、オメガ3は熱にとても弱く、すぐに酸化してしまうため、生のままかけて食べてください。
ふたを開封したままにせず、なるべく早めに使い切りましょう。

サラダにかけたり、お刺身にかけてカルパッチョ風にしても美味しいです。

オメガ3の油には独特の風味や香りがありますが、玄米との相性が良いので、美味しく食べられますよ。

●トランス脂肪酸

植物性の油なら何でも良いというわけではありません。

例えば、マーガリンは植物性の油を使っているから、体に良いイメージを持っている人は少なくありません。

植物性である多価脂肪酸は、常温では液体で酸化しやすい油です。
そこで多価脂肪酸に水素を添加して固形にした油をトランス脂肪酸と呼びます。

科学者の間では、油に水素を添加することを「オイルをプラスチック化する」と言われているそうです。

トランス脂肪酸はプラスチックと分子構造が似ている人工的な油のため、自然界では分解されません。

「植物性だから安心」といって、パンにたっぷりマーガリンを塗っているとしたら、非常に危険です。

マーガリンの他にも、フライドポテト、クッキー、ビスケット、パイ、ドーナツ、
ケーキ、シュークリーム、アイスクリーム、菓子パン、インスタント食品など
とても多くの食品に使われています。

トランス脂肪酸が体の中に入っても、必須脂肪酸と同じような働きが出来ないため、
細胞膜の構造や機能が正常で無くなり、活性酸素が大量に発生してしまいます。

特にトランス脂肪酸の悪影響を受けているのが脳です。

イギリスのオクスフォード大学のピュリ博士は、トランス脂肪酸が脳の活動に必要な酵素を破壊して、
ADHDを引き起こす要因となっていることを報告しました。

また、トランス脂肪酸を多く摂っている高齢者は認知症になりやすいとの報告もあります。

脳は60%が脂質で出来ているため、不飽和脂肪酸のオメガ3が欠かせません。

しかし、オメガ3が不足していると、その代わりにトランス脂肪酸が材料として使われてしまいます。
その結果、脳の細胞膜が不安定になり、伝達物質が衰えてしまう。
つまり、脳機能が著しく低下してしまうということです。

また、トランス脂肪酸は体内で動脈硬化の原因にもなる悪玉コレステロールを増やし、
逆に予防効果のある善玉コレステロールを減らしてしまいます。

脂質の摂り過ぎは体内の炎症を大量に発生させ、様々な病氣を引き起こしますが、
質の悪い油ばかり摂っているという問題点も見逃せません。

脂質は細胞膜やホルモンの材料となったり、血管に弾力を作るので動脈硬化の予防にもなります。

他にも脳の活性化、皮下脂肪として臓器を保護したり、脂溶性ビタミンの吸収を促すなど
脂質は体のあちこちで使われて、大切な働きをする営養素なのです。

しかし、食事から摂る油の種類次第で、健康状態に天と地ほどの差が出てしまいます。

脂質は液体よりも個体の方が安定しますから、良質な脂質を含む玄米を主食にすることも、重要な意味を持ちます。

普段から油を摂り過ぎてしまう人は、摂取量を減らしながらオメガ3を摂る量を増やしてください。

山本和佳