【一般無料】ネット依存のリスク(健康基礎講座)

・生活規則の狂いから始まる悪循環

・脳の○○○が破壊される

・集中と依存の違い


前回に引き続き、ネット依存のお話です。


お酒やタバコ、覚醒剤なども依存すると大変ですが、
法律で禁止されていたり年齢や場所の制限を設けており、使用の面で多少のハードルはあります。

しかし、スマホが普及した今では、ネットはいつでもどこでも使う事が出来て
子どもの利用制限もありませんので、依存が広く深く浸透する危険性があるのです。


スマホやゲームをしているうちに時間が過ぎてしまい、深夜まで夢中になってしまった。
当然翌朝の目覚めは悪い。学校へ行っても頭がボーっとして勉強に集中できない。

この辺までは経験がある人は多いのではないでしょうか。

ここでネットの利用時間を抑えれば、また規則正しい生活に戻れますが、
相変わらずネット漬けの生活を送っていると生活のリズムが狂い、学校に行けなくなります。

成績が下がったり家族との衝突など、現実の世界に問題が出てきて、それから逃れるように
さらにネットにのめり込んでいきます。


こうして依存が進んでいきます。
具体的にある中学生のケースをご紹介します。


ある中学2年生の男子生徒がゲーム依存になったケースです。
この少年は幼い頃から元氣な子どもで、小学校では友達も多く、成績も良好でした。

小学校5年生の時に両親が離婚して、母子家庭になった頃からゲームをする時間が増えていきました。
最初は家庭用ゲームだったのですが、小学校6年生からはオンラインゲームを始めました。


この頃はまだ友達と遊ぶこともありましたが、中学校に入ってからクラブ活動の場で
いじめを受けるようになると、学校へ行く回数が減っていき、家でゲームをする時間がさらに増えました。

ゲームを明け方まで続けるので昼夜逆転の生活になり、
朝は起きることができず、学校は休みがちになっていきました。

少年はそわそわして落ち着かない様子で、友達との付き合いも無くなってしまったのです。


一緒に暮らしていた母親は、生活のことで精一杯で少年の事を氣にかけている時間が無かったのですが、
少年の明らかな異変におかしいと思い、検査を受けることにしました。
この少年の知能検査をすると、注意力が著しく低下している事が分かりました。

実際に少年はゲーム以外の事は全く集中できなくなっていました。
以前は本を読むこともありましたが、読んでも頭に入らなくなってしまったそうです。
活発で成績良好だったのがゲームにのめり込んだ結果、頭がぼんやりとして無氣力になってしまったのです。


元氣に成長していた少年が別人のように変わっていく様子が、ネット依存の恐ろしさを物語っています。

ここまで極端では無くても、ネットを利用していれば依存の危険性と隣り合わせで
常に依存の入り口にいるようなものです。


世の中では「何か夢中になれる物、やりたい事があるのは素晴らしい」と言われる事がありますが、
集中する事と依存は全く別のことです。

例えば、ゲームのし過ぎを問題だと思わない人の中には、ゲームをすると集中力が上がると言う人もいます。

しかし、脳の働きや日常の行動を見れば、集中と依存は全く異なるものだと容易に分かります。



1998年に科学雑誌「ネイチャー」で発表された論文において、
テレビゲームをする時に脳内で何が起きているのか世界で初めて報告されました。

8人の男性を対象にしてPETという測定器を使って50分間ゲームを行い、
ゲーム開始前とゲーム終了後の脳内の状態を調べました。

すると、脳内の線条体という領域でドーパミンの分泌が2倍に増えていた事が分かりました。

ちなみに覚醒剤を静脈注射した時のドーパミン分泌増加は2.3倍なので
50分間のゲームは覚醒剤に匹敵するほど興奮作用がある事になります。

線条体は快感の中枢であり、そこでドーパミンが放出されると快感をもたらし、
その時に行った行為を繰り返すようになり、それが依存へと繋がっていきます。



線条体にドーパミンが放出されるとそれが喜びという報酬となり、
その時にとった行動を再び行う意欲を生みます。

こうした脳のしくみは報酬系と呼ばれ、脳はある行動が報酬に結びつく事を学習すると
その行動を意識的または無意識的に繰り返すようになります。


もちろん、脳にとって報酬系システムは本来は大切な機能です。

例えば、勉強を頑張ってテストの点が上がって評価されると、ドーパミンが放出されて喜びを感じます。
すると困難があってもやり遂げようとする意欲が沸いて、さらに勉強に打ち込むようになります。

仕事であれば、周りから認められたり達成感を味わう事、あるいはお給料をもらう事で
仕事という行為が強化されて、嫌な事があってもそれを乗り越えて頑張ろうとモチベーションが上がります。


このような体験を積み重ねることで、自分の価値観や行動習慣が作られていきます。
そして、その行動をコントロールしているのが前頭葉です。

前頭葉が上手く働いている人は、自分の行動規範に沿って行動し、努力がすぐに報われなくても、
長期的な目標に向かって努力を続ける事が出来ます。


これが健全な脳の働きなのですが、ネットを過剰に利用すると脳内の報酬系のシステムが破壊されてしまいます。

現実の社会では、努力しても結果が出ない時だってあります。
簡単に報酬がもらえるわけではありません。

目標に向かって努力する中で、嫌な事や誘惑があっても、それを我慢して
優先すべき目標へ向かって頑張る事が本来の報酬系の役割です。


しかし、ネットやゲームは脳内の報酬系のシステムを変えてしまうところに恐ろしさが潜んでいます。

例えば、ゲームをするだけで簡単に興奮や歓喜を味わえる。
つまり、大した労力を使わずにご褒美がもらえてしまうのです。

そうした行動を繰り返すと、脳の報酬系の回路はショートカットを作ってしまい、
脳は楽してご褒美をもらえる事を学習してしまいます。


すると、わざわざ時間や手間をかけて報酬をもらうために頑張る事が馬鹿々々しくなってしまう。
部活動や友達と遊ぶことなど、それまで大切にしてきたことがどうでもよくなって
依存の対象にしか関心を示さなくなってしまいます。

脳にとっての報酬が仮想のものにすり替わってしまうと、現実の社会に適応するのが難しくなっていきます。

報酬系はやってはいけないことにブレーキをかけて、やらなければならない事や
成果が得られる事にモチベーションを感じ、アクセルを踏みます。


テレビを見たいのを我慢して勉強に集中する。友達と遊びたいのをグッとこらえて部活動に専念する事はその良い例です。
報酬系は目標に向かって頑張る力になってくれている大切な脳の機能です。


しかし、報酬系が崩壊するとブレーキもアクセルも利かなくなり、無氣力な人間になってしまいます。

ネット依存の人は前頭葉の機能が低下して、萎縮しています。
萎縮は神経細胞が死滅したために起こり、一度死滅した神経細胞は元に戻りません。


前頭葉はやってはいけない事にブレーキをかけたり、報酬を得られる行動に意欲的になったり
想像力を働かせたり、価値判断を行う上で重要な部位です。

ゲームを止めたくても止められないのは、ゲームをやり続けるとどうなってしまうのか想像できなかったり、
想像していても行動を止めるブレーキが故障して、正しい判断や行動ができなくなるからです。



2010年頃からネット依存を問題視する声が上がり始めました。
最近ではマスメディアでも取り上げられるようになったため、いくらか認知されるようになりましたが、
以前はゲームにのめり込むことは依存とは関係ないという意見も多くありました。

利害関係を理由にその立場をとっていた人もいたでしょうが
一般的にもゲームに依存性があるとは思われていなかったのです。


先にも述べましたが、集中と依存は全く別のものです。
ネットの使い過ぎにより脳に与える作用が行動や考え方、人柄を変えてしまい、判断を狂わせてしまいます。

依存になると自分をコントロール出来なくなるので、社会生活を送れなくなってしまいます。
いったん依存になると、ただゲームを止めれば治るという訳にはいかないが難しいところです。

次回は、ネット依存の後遺症についてお話させていただきます。


山本 和佳

無料メールニュース登録はこちら

勉強会&酵素教室&女性限定企画情報はこちら