・足腰が衰えているサイン
・骨を丈夫にする身近な食べ物
・メタボは重篤な病氣の一歩手前
自分の足で立って歩けるというのはとても幸せな事です。
どんなに乗り物の性能が良くなっても、歩く事は第一の移動手段です。
もともと農耕民族である日本人は、畑仕事中心の生活によって丈夫な足腰を保っていました。
今はスーパーに行けば食材が簡単に手に入りますし、自分の足を使わないで遠くまで移動する事も出来ます。
しかし、その便利さにただ浸っているだけではすぐに運動不足になってしまうので
体が弱らないように氣をつける事もまた現代人の大事な勤めです。
「老化は足腰からやってくる」と言われます。
もちろん内臓や他の部分も老化していきますが、足腰の老化は日常生活の中で自覚しやすい部分であるだけに
ちょっとした変化から自身の生活を見直す機会とする事ができます。
次の項目に心当たりはありませんか?
・立ったまま片足を上げて靴下をはけない
・平らな場所でよくつまづく
・立ち上がる動作が辛い
・階段を上るのがきつくて、エレベーターを使う
・背中が丸くなった
いかがでしょうか。
上記に1つでも当てはまる人は足腰の運動機能が低下しています。
立つ、座る、歩くといった基本的動作は、骨が丈夫である事と関節がスムーズに動く事が前提条件です。
歩く時はひざの関節に体重の3倍もの重さがかかっています。
体重が60kgの人なら歩く度に180kgもの重さがひざにのしかかるので、
どうしても年齢と共に関節が硬くなってきます。
筋肉も老化と共に衰えていきますが、特に下半身の筋肉が萎縮していきます。
継続的な運動をしていないと、筋力は1年で1%ずつ低下していきます。
体の芯である骨。
骨と骨をつないで曲げたり伸ばしたりする関節。
体を動かす際にバネとなる筋肉。
これらは連動しているため、どれか1つでも弱ってくると体全体の動きに歪みが生じてしまいます。
骨が弱くなると背中が丸くなり、筋力も衰えてきます。
すると、近い距離でも歩くのが億劫になって車で移動するようになります。
また、階段を上るのが面倒になってエスカレーターに頼るようになるので、ますます運動不足になります。
運動量が減ると体重が少しずつ増加するため、歩いたり立ち上がる時に腰やひざに負担がかかります。
腰やひざに痛みが出てくると歩くのが辛くなり、ますます動かなくなって
また体重が増えるという悪循環を繰り返します。
生活を便利にして手間や負担を減らしてくれるものは、裏を返せば体を怠けさせてしまうとも言えます。
例えば、寝具をベッドにすると布団のように上げ下ろしする手間と時間が省けますが、
その分足腰の筋肉を使わなくなります。
また、和式の便器は自然と足腰や骨盤底筋が鍛えられるような姿勢でした。
日常の中でごく普通に行う動作でけっこう筋肉を使っていたのです。
一方で洋式は座っているだけなので楽な分、体にかかる負荷がほとんど無くなります。
現代人が健康長寿を望むなら、便利な生活を享受しながら骨・関節・筋肉を丈夫に保つことが大切です。
日本の代表的な発酵食品である納豆には、骨を丈夫にするビタミンKが豊富に含まれています。
納豆は関東や東北地方で消費量が多く、関西や九州、四国など西日本では少なめです。
納豆をよく食べている地域は、あまり食べない地域と比べて骨折になる確率が低いことが分かっています。
他にもビタミンKはアスパラガスやブロッコリーに含まれていますので、
食事に取り入れて骨量の低下を防ぎましょう。
それから40代以降になって多くの人が悩むのがメタボです。
厚生労働省の発表によると40~74歳では男性の2人に1人が、女性の5人に1入が
メタボまたは予備軍であり、その合計は1940万人と推定されています。
また、世界人口の死因を調査した結果によると、約60%の人がメタボが要因となる死因と報告されています。
メタボは女性より男性に多く見られますね。
それもそのはず、男性がメタボになるリスクは女性の4倍と言われています。
メタボになる原因として食べ過ぎや運動不足が挙げられます。
これらは男女に共通しているのですが、もう1つ男性の更年期障害がメタボと関係があるのです。
女性の更年期障害が女性ホルモンであるエストロゲンの低下によるもので、
男性の更年期障害は男性ホルモンのテストステロンの低下によって起こります。
どちらも性ホルモンの低下から来ているのですが、それぞれの症状は全く異なります。
女性の場合は生理不順やほてりのような身体的症状が主ですが、
男性はうつ病のような精神面の症状が表れるのが大きな特徴です。
実は男性のうつ病患者には更年期障害の人も含まれています。
本来、男性ホルモンは30歳頃がピークで、その後は1年に1%ずつ減少していきます。
しかし、男性の更年期障害になる人は男性ホルモンが急激に低下してしまうのです。
女性の更年期障害は人によって症状の程度差はありますが、年齢を重ねる中で自然な体の変化に伴うものです。
それに対して男性の更年期障害は、自然のリズムから外れて引き起こされます。
実はこの現象が多くの中高年が悩まされているメタボと関係しています。
ご存知の通り、メタボは中高年に多い生活習慣病です。
若い人が暴飲暴食して運動しないでいると肥満にはなりますが、メタボになるケースは少ないですね。
なぜ年をとるとメタボになりやすいのでしょうか。
それはテストステロンが関係しています。
テストステロンが減少すると皮下脂肪ではなく、内臓脂肪が蓄積されやすくなります。
実は内臓脂肪は皮下脂肪には無い性質を持っています。
それは、アディポサイトカインの分泌異常を引き起こすという性質。
アディポサイトカインとは脂肪細胞から分泌される物質の総称ですが、内臓脂肪が蓄積されると
分泌異常を起こします。
一般的に体内で分泌されるホルモンは適量なら体に良いのですが、多過ぎたり少な過ぎると心身のバランスを崩します。
例えば、ドーパミンは適量なら仕事や勉強を意欲的に取り組む事ができますが、
多過ぎると興奮したりイライラするというように自分をコントロールできなくなります。
しかし、アディポサイトカインはほとんどが悪玉で、あまり多く生産されない方がよいホルモンなのです。
その1つであるレジスチンはインスリンの働きを妨げるので、糖尿病のリスクが高くなります。
他にも血管に炎症を起こして動脈硬化を誘発するTNFαなどがあります。
内臓脂肪が溜まると糖尿病や高血圧、動脈硬化が進む理由はアディポサイトカインにあります。
つまりメタボになると、将来病氣になるリスクがかけ算式に増えていくのです。
肥満症(またはメタボ)、高血圧、高血糖、高脂血症を患うと心臓疾患のリスクが格段に上がるため
「死の四重奏」と呼ばれています。
しかし、このうち3つでも該当すると1つも当てはまらない人に比べて
心筋梗塞や狭心症を発症するリスクが36倍にも跳ね上がります。
動脈硬化は自分では氣づきにくいかもしれませんが、メタボは目に見えて分かりやすいので
健康のバロメーターにして測る事が出来ます。
メタボを解消するには内臓脂肪を減らす事が第一です。
では、どうすれば内臓脂肪を減らすことが出来るのでしょうか。
それはごく身近な生活習慣を変える事。体温を上げる事です。
食事に関してはバターやラード、パーム油のような飽和脂肪酸を抑えて、肉食は止めましょう。
玄米菜食を中心にして、油は魚や亜麻仁油のようなオメガ3を摂ってください。
最初は物足りなく感じるかもしれませんが、続けると美味しさが分かるようになります。
調理にあまり手間をかけずに美味しい料理が出来て、栄養も優れている。
体調も徐々に変化して、太りにくい体になります。
体温が上がると体は多くのエネルギーを消費するため、内臓脂肪が解消されるのです。
いくら丈夫な体に生んでもらっても、暴飲暴食をしていたら中年期にメタボになって
体内で病氣の元がたくさん出来てしまいます。
適正体重の維持は、健康のために大事な心がけです。
正しい習慣は人生の宝です。
健康でいるのも病気になるのも、その人の習慣が作ったものです。
正しい習慣と共に、いつまでも自分の足で歩ける体を目指しましょう。
山本 和佳