タレントアニマル

「ペットブーム」に乗り、テレビ・CMで活躍するタレント動物達。
長距離の移動、浴びたこともないフラッシュの光、たくさんの人間、たくさんの機械、非日常な生活を強いられ“天才チンパンジー”と親しまれたパンくんの行方は・・・

チンパンジーは、人間と最も近い共通の祖先をもつ霊長類です。
アフリカやサバンナに生息し、木の実から小型の哺乳類まで食す雑食動物で、20~100頭前後の群れで生活をします。
しかし密猟や熱帯雨林の破壊で頭数が激減、現在は国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種に指定されています。

チンパンジーの1日の移動距離は多いもので100km、握力は200~500kgととてもタフで力強い動物で、その社会感覚や生活様式は私たちとどこか似ている部分があります。

雌や若い雄などの劣位者が、優位に立つ大人の雄に対して挨拶をする、
そのトップに立つ雄も、老齢者を敬い尊重する、
追いかけっこをしたり、咬んだり叩いたり、色々な遊びをする、
喧嘩をすれば仲直りをし、第三者に慰めを求めることもあります。

一方私たちにはないチンパンジーの行動として、「子殺し」があります。(最近は人間が自分の子どもを殺すこともあるようですが・・・)
大人の雌も雄も、自分と血縁関係のない子を殺し、食べます。この理由ははっきりとわかっていません。
チンパンジーは雑食で、獣肉もよく食べるので、同じように子どももバリバリと食べてしまうようです。

しかし、母親と子ども愛に通う愛はとても深いのです。
幼い頃はもちろん、子どもから青年へと成長してもなお共に生活をする親子が観察されています。
逆に、はぐれてしまえば泣き叫び、密猟や病気など何かしらの理由で母親を失うと精神が不安定になり、何も食べずに死んでしまう青年チンパンジーも存在するほどです。

みなさんが知らないチンパンジーの部分について書かせていただいた所で、本題の“天才チンパンジー”として2004年から日本テレビ「天才!志村動物園」で一躍人気を出したチンパンジーのパンくんの話題に移ります。

2001年宮崎の動物園で生まれましたが、育児放棄により人工的に育てられ、3歳になった頃、後に繁殖相手となる雌チンパンジーとともに熊本県阿蘇市の動物園に移されます。

パンくんは普段阿蘇カドリー・ドミニオンという動物園で暮らし、1日3~4公演前後で行われるショーに出演していましたが、その合間を縫って、東京に来て撮影を行っていたそうです。
ですが繁殖準備を理由に、2012年夏から来春までを予定としたパンくんの引退公演が始まっていました。

番組内では志村けんさんとお揃いの洋服を着せられ仲良く遊んだり、犬とおつかいに出掛けたり、カメラで写真を撮影したり、温泉に浸かるなど様々な事に挑戦する姿が映されました。
そしてその体験や生活模様についてのDVD・本の発売、iPhone・iPadアプリの配信、CM出演など、多くの売上も残しました。

しかし9月6日、事故は起こります。

パンくんはいつも通りに公演をこなしていました。
約40名いた観客に向けておじぎをした直後、舞台袖にいた女性研修生(20歳)へ飛びかかり顔や腰、足首など数か所に噛みつきました。
トレーナーがパンくんを引き離し、女性研修生はドクターヘリで運ばれ、縫合手術を受けましたが、約2週間の入院が必要な大けがとなってしまいました。

この予兆のない行動はかつてないもので園側も驚いており、原因はわからず、ショーおよび番組出演は見合わせているということです。

チンパンジーの行動に、チャージング・ディスプレイというものがあります。
私はこの行動に事件のヒントがあるのではないかと考えます。

チャージング・ディスプレイというのは、ジャングルの中で叫び声をあげながら毛を逆立て、枝を揺らして飛び回り、石を投げ、仲間に突進するなどの行動で、意味はおよそ2種類あると言われています。

1つは他の雄への威嚇、優位性の誇示、優劣関係が不安定な時や劣位者からの挑戦などから起きます。
もう1つは遠距離時での仲間同士のコミュニケーションで使われます。

大人の雄というのは恐れの的であり、雌や若い雄は道をあけたり、積極的に挨拶をしにいきます。
そういった行動からも、チンパンジーの大人の雄は要注意だということが素人でもわかります。
まだパンくんにも慣れていない研修生を近づかせてしまったこと、繁殖準備で今までとは生活や環境が変わっていたこと、様々な条件が重なっていたことを軽視してしまったのでは?と思いました。

事件が起こる前にも、専門家からは注意の声があったそうで、事故後も「チンパンジーは凶暴で、そもそも専門家以外と絡ませてはいけない動物」と伝えています。

また、パンくんも覚えさせられていたであろうチンパンジーや猿などの曲芸に、歯と歯茎を出し、さも笑っているかのような表情をさせる芸があります。
実はそれはグリマスと言い、霊長類に見られる恐怖を表す表情で、我々が感じている喜びや楽しみとは全く真逆の気持ちを表しているのです。
そんな表情を簡単な指示でさせてしまうなんて、一体どんな調教をしているのでしょうか・・・
そしてその仕打ちがいつか必ずくるでしょう。

最後に、タレントの志村けんさんが書く公式ブログを載せさせて頂きます。
http://ameblo.jp/shimura–ken/day-20120911.html

パンくんとのツーショット写真とともに、「動物は人間よりも優しい」「自然に行きましょう」そんな言葉がパンくんや被害者の女性、視聴者に向けて書かれています。

阿久津 桜

アナザーmember’s CLUB