海に住む数少ない爬虫類、ウミガメの危機

観光客の目玉、ウミガメの感動的な産卵の見学会?この悲鳴を受け止めなければ私達の未来は無い。金と人間の欲望に巻き込まれる絶滅危惧種…

地球上に現存するウミガメは全7種で、ほとんどのウミガメが世界中の海を回遊して生活しています。

そしてその全種が、ワシントン条約(絶滅の恐れのある野生動植物の国際取引に関する条約)および、国際自然保護連合(IUCN)レッドリストに指定されています。

それぞれ、絶滅危惧種にアカウミガメ・アオウミガメ・ヒメウミガメ。近絶滅種にオサガメ・ケンプヒメウミガメ・タイマイ。情報不足種にヒラタウミガメが記載されています。

また、国内でも発見され東太平洋に分布するアオウミガメ属のクロウミガメは、独立種あるいはアオウミガメの亜種と言われています。しかし未だ解明されず、分類学上、種として認められていません。

このようにウミガメは様々な謎に包まれていることもあり、多くの人々がどこか神秘的な生き物で、遠い存在のようなイメージがあると思います。

しかし毎年迎える5~8月の産卵期に、アメリカ西海岸・メキシコ・東シナ海などからはるばる日本を目指し、ウミガメは泳いで来ています。

産卵地には、屋久島・奄美・三重・八重山諸島・福岡・高知・徳島・沖縄・和歌山・渥美半島・小笠原・宮崎・静岡・知多半島・伊豆諸島・長崎・佐賀・千葉~茨城にかけてなどがあり、私達が知らないだけであって、意外にも日本各地へ産卵上陸しているのです。

そして、生まれた砂浜や初めて産んだ砂浜で再び出産するという事も少しずつわかっており、私達日本とは深い関わりがある事になります。

産卵上陸すると、満潮時でも卵が流れないように波から離れた砂浜に穴を掘り、そこへ卵を産み落とします。そして再び海へ帰るまでは1~2時間かかり、まさに命懸けの出産というわけです。

噂に良く聞く〝ウミガメの涙〟 ですが、出産の苦しみによる涙だとよく耳にします。しかしあれは涙腺が発達した塩類腺から分泌される液体で、涙ではありません。
普段海藻などの海産物を食す際に余分な塩分を摂っているので、それを体外へ出し、体内の塩分濃度を調節しています。
たまたま塩類腺が目尻に位置しているため、涙だと言われているようです。

ウミガメは1度に100個以上の卵を産みます。また、産卵期中は何度も砂浜に上陸をし、産卵を試みます。
しかし、上陸したウミガメ全てが産卵することはありません。約半数は人の気配や灯りに驚いたり、穴を掘ることに失敗して海へ戻ってしまうのです。

卵は40~80日ほどで孵化し、砂の温度の低下で砂から這い上がります。それは捕食者から身を守るため、暑さで命を落とさないために、夜を見計らうための本能が備わっているからです。

しかし卵の数だけ子ガメが海へ行けるわけではなく、捕食者であるカニや鳥、フナムシに襲われることがあります。
また、原因として人間も大きく関わっています。人間が歩くことで巣穴の上の砂が踏み固められ地表に出てこられない、海の僅かな光を感じて進むため灯りに反応して道路へ出てしまう、砂浜にある数多くのゴミを避けることができずに傷ついてしまう、防波・消波ブロックにはさまってしまう…そんな事が多々起きているのです。

なかでも、エコツアーなどと呼ばれるウミガメの産卵見学ツアーと言うのは、 命を懸けて産卵をするとても大切な行動を人間が囲んで見て楽しむ、という不自然極まりない事です。

ウミガメは捕食者から身を隠しながら夜に産卵するというのに、なぜそこに地球上最悪の生物である人間がいるのか、ウミガメにとって気が狂う思いです。

もともとウミガメの音・光に対する感度は高く、どんくさい人間が気を遣って産卵を観察をしたところで、限界があります。
最近ではフラッシュ撮影および灯りの使用を禁止している見学会がほとんどですが、専門家が付き添い、暗闇の中でウミガメの頭数を確認したり卵の盗難を防ぐ役割を果たすものもあるようです。
しかしそれらは産卵の様子を見たいという欲を、ツアーの様々な趣旨で正当化しているように感じます。

専門家ではない私達が本当にウミガメのためを思うのならば、できる事は砂浜のゴミ拾いだと私は考えます。人間は昼行性なのだから、わざわざ夜に海に出向き、ウミガメの様子をただ見る必要は全く無いからです。

また、埋め立てや人為的改変を加えた砂浜が増え、ゴミはもちろん砂の減少や荒廃により、ウミガメが産卵できない環境が次々と進んでしまっているのです。

世界規模でのウミガメにとっての危機は、漁網による混獲・船のスクリューに巻き込まれるなどの事故・海洋汚染・ウミガメの卵と肉を食す文化・間違った保護活動などです。

ウミガメは生まれてから成熟するまでに20年ほどかかるため、それまで生きることができなければ子孫は残せません。

ウミガメに限った話ではありませんが、様々な習性を考慮して完全に自然な状態で卵を保護し、孵化させることの難しさもあります。
また、孵化後の子ガメの本能的行動をさせてあげられるか、それによって間違った保護に繋がる可能性もあり、生かすことができない場合もあります。

この多くの問題がウミガメを絶滅へと追いやっていますが、ウミガメにとって良い環境に今すぐ変えられるものが山ほどあることも事実です。

観光客が産卵を見学しなければ、光害もウミガメが驚いて海へ引き返すこともありません。砂浜を美しくすれば、ウミガメはまた来年も産卵をしに来てくれます。漁網による混獲も、ウミガメがかかる事を防ぐネットがあります。

私達が欲を追い求めることにより、環境がどんどん悪化していきます。この記事ではウミガメにとっての悪影響についてですが、これは絶対に私達人間に返ってきます。

既に様々な動物が悲鳴をあげているということは、人間の苦しみはもうすぐそこまで来ているのかもしれません。

阿久津 桜