ミツバチが消える原因としては船瀬俊介氏が指摘する農薬問題があることは間違いない。
その他にも知られざる部分では電磁波問題も大きいだろう。
今回はALIVEの創設者である野上ふさ子氏が推薦する一冊の本と、氏が書かれた文に注目してみたい…
地上からミツバチがいなくなると、何が起こるでしょうか?
春から夏にかけて野原に花が咲き乱れ、果樹園などでリンゴ、ナシ、イチゴなどの花が咲くころになると、ミツバチが蜜の採取にやってきます。
そして花の中を動き回ることで雄しべと雌しべを受粉させてくれ、その結果おいしい果物が実ります。野生の果樹の花であれば野生の日本ミツバチが飛んでくるかもしれません。
しかし、果樹の栽培地では、花が咲くシーズンになると輸入の西洋ミツバチの巣箱を果樹園に運び込み、ミツバチを放します。このような巣箱を多数所有している「養蜂」家は、果樹の開花にあわせて日本列島を北上しながら蜜の採取を行っています。
ところが近年、ミツバチの蜂蜜を集める能力ばかりでなく、花粉を交配させる能力についても最大限利用しようという方法が広く行われるようになりました。
イチゴ、メロン、スイカ、ナス、キュウリ、カボチャなどの果実をとる野菜のほとんどが現在ビニールハウスで栽培されるようになっています。
このハウスの中にミツバチを放して受粉させれば、今までのように人手で受粉させるか植物成長調製剤を塗布するといった手間と費用を省くことができます。
ミツバチたちは、巣箱ごとレンタルされ、野菜の花の咲く頃をみはからってハウスの中に放され、ハウスからハウスへと移されながら受粉作業をさせられることになります。
毎日スーパーに行く消費者は、手にする野菜や果物の陰でこれらのミツバチたちがどれほど一所懸命働いているか、そのありがたさを知らされているでしょうか?
しかも、真冬だというのに、なぜ店頭に日本産のイチゴやナスやキュウリ、トマトなどが並んでいるのか、ふしぎには思わないでしょうか?
多くの果実は春に花を咲かせ、夏から秋にかけて果実を実らせます。この時期こそが、果実を食べてもらうことで種子を拡散させようという植物の意向で、いちばん美味しく栄養価も高い「旬」の時期なのです。
ところがこの自然の実りに反してスーパーに冬でも野菜や果実が並んでいるということは、開花が秋から冬にかけて行われているということになります。
本来ならば植物の生育には適していない季節なのに、ビニールで囲い、時には石油を燃やすなどしてハウス内を暖め、そして本来ならば氣温が低くて動けないミツバチを放して受粉させるという、とても不自然なことを行わなければなりません。
しかもナスやキュウリといった野菜は、ミツバチにとっては花粉が少なく、どんなに花から花へと飛び回って一生懸命働いても、この過酷な労働に見合うだけの蜜は得られません。
そのせいか働きバチの寿命は1~2カ月しかないといいます。
過酷さは労働の内容ばかりではありません。労働条件も劣悪です。
ハウスの中にはさまざまな農薬が散布されることもあります。化学肥料をまいた土に、一種類だけの野菜を大量に栽培する場合に起こることは、植物の免疫力の低下であり、そこにつけこんでさまざまな病原性のウイルスや細菌が取り付きます。
そうなると農薬をまかないわけにはいきません。植物の葉に付くダニもいますが、ミツバチの体に取り付くダニもいます。病氣になって死ぬミツバチも続出します。
こうしてみると、ミツバチのおかれている状況がいかに悲惨なものかわかります。
旅から旅へと渡り飛ばされ、秋から冬にかけての休息時期にたたき起こされ、空氣のよどんだ狭苦しいビニールハウスの中に閉じ込められ、農薬などのさまざまな化学物質にさらされ、どんなに働いても蜜はごくわずかしか得られず、働きづめでもう体はぼろぼろです。
もうみんなで逃げ出すか、いっそのこと死んだほうがましではないでしょうか・・・こうした理由で、日本を含め、世界各地でミツバチが次々と「消えている」と推測されています。
ミツバチがいなくなることは「花は咲いても虫もいない、鳥の声も聞こえない」というまさしく「沈黙の春」の到来なのです(原題は『実りのない秋』です)。野菜や果物も実らなくなる。これはベジタリアンにとってもよそ事ではないでしょう。
本書には、なぜミツバチが大量死するのか、その原因を追い求め、おそらくは、その最大の原因は「生物の多様性」の喪失と破壊にあると述べています。
「ハチはなぜ大量死したのか」ローワン・ジェイコブセン著 中里京子訳。
「養豚」や「養鶏」と同じように、「養蜂」は、昆虫を家畜として扱う産業です。
家畜産業の目標は、可能な限りの経済効率化であり、可能な限り動物の生産能力を利用しつくすことです。
そしてこのような経済効率中心主義の産業が、豚インフルエンザや鳥インフルエンザなどの新しい疫病を作り出して人間に復讐を始めているかのようです。ミツバチの大量脱走と大量死という現象は、このような人間の行為に対する自然界からの警告のように思えてなりません。
(引用終わり)
以上の文体の中でも、最も野上ふさ子氏らしい指摘は、ミツバチの立場の視線に立って事象を捉え分析していることだ。
その優しさがあまる視点と、端倪すべからざる鋭い文章力を同時に持ち合わせた人物は極めて希有である。
我々は、野上ふさ子を失ってはならない…
(永伊智一)
