「彼女がいなければ、環境運動は始まることがなかったかもしれない」とまで賞賛された女性がいます。

それこそ『沈黙の春』の著者であり、この映画の主人公であるレイチェル・カーソンです。
彼女は、1962年に出版されベストセラーとなったこの本の中で、世界で初めて化学物質が環境に与える危険性を告発しました。
それをきっかけに、アメリカ政府は有機塩素系の殺虫剤や農薬であるDDTの使用を禁止する法律を制定しました。
国家をも動かすインパクトを与えたこの本は、一方で彼女を一部のメディアや化学産業からの批判にさらすことにもなりました。
しかし彼女は“ヒステリックな女性”という誹謗にも決して屈することなく、人類の健康と環境の危機について発言を続けたのです。
『沈黙の春』は『アメリカを変えた25冊の本』にも載り、タイム誌の『20世紀の偉大な知性100人』のなかに掲載されているのですから、今となっては彼女の鳴らした警鐘は人々のなかに生きていると思います。
彼女は本作の基になった『センス・オブ・ワンダー』の執筆を最後に、癌のためその生涯を閉じました。
遺作となったこの本の、海のことや自然界の生命のありのままの姿こそが彼女が本当に書きたかったことだと言う人もいます。

本作でレイチェル・カーソンを演じたカイウラニ・リーは、18年にわたって『センス・オブ・ワンダー』の一人芝居を続けてきた女優です。
その脚本をカーソンが余生を送った自然豊かなコテージに舞台を移し、インタビュー形式のドラマとして制作されました。
彼女の母親や姪の息子であるロジャーについて、執筆してきた作品のこと、そして自然の大切さを静かに語る様子を、ドキュメンタリー・タッチで美しく描いています。
「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないのです。― レイチェル・カーソン
彼女が伝えようとした未来へのメッセージにぜひ耳を傾けてください。
『レイチェル・カーソンの感性の森』
(2008年/アメリカ/カラー/16:9/HD/英語/55分)
監督:クリストファー・マンガー(『ウェールズの山』、『ガール・フロム・リオ』)
脚本・出演:カイウラニ・リー/プロデューサー:カレン・モンゴメリー、カイウラニ・リー
撮影:ハスケル・ウェクスラー
配給・宣伝:アップリンク
2011年2月26日より渋谷アップリンクにて上映中。
ほか全国順次公開予定。