予告編がご覧になれます。
「死の列車」と呼ばれる列車があります。中米グアテマラとの国境地帯からメキシコを通って米国まで8000キロを走る長距離貨物列車のことです。
名前の由縁は、桃源郷を目指す不法移民が屋根に乗り、命がけの脱出行に身を投じるからです。
飢えや転落事故に加え、犯罪組織に誘拐される危険もあります。
実際に列車に同乗して取材した記事をご覧ください。
「死の列車」を行く 中米移民物語
今回ご紹介する映画はこの「死の列車」を題材にした「社会派映画」ですが、それよりも青春映画、ロードムービーとして心にしみる作品となっています。
日系監督キャリー・ジョージ・フクナガの長編デビュー作。
2009年サンダンス映画祭監督賞、撮影監督賞受賞。
第5回オースティン映画批評家協会賞、外国語映画賞など。
製作年:2009年
製作国:米=メキシコ
原題:SIN NOMBRE
時間:96分
監督:キャリー・ジョージ・フクナガ
ホンジュラスで暮らす少女サイラは故郷を離れ、父親と叔父と共に約束の地=アメリカを目指していた。
だがそれは、グアテマラとメキシコを経由する長く危険な旅だった。
移民たちでひきめきあう列車の屋根の上で彼女は、カスペルという名の青年と出会う。彼は列車強盗団の一員だったが、サイラに暴行を加えようとしたボスを殺してしまい、追われる身に。
そんな彼にサイラは命を救われた恩を感じ、淡い恋心を抱くようになる。
ある朝、カスペルがこっそり列車を降りたとき、サイラは父に黙って彼の後を追った。
作品ではまず、主人公の青年が少女と出会うまでに、ギャング団の生活が克明に描かれます。
年端もいかない子どもに改造銃を持たせて、捕虜にした敵ギャングを殺させるなど、これが現実だと思うと絶望感に言葉を失います。
貧困と希望のない出口なしの生活のなかで子どもたちへ受け継がれていく暴力の連鎖の構造には、まったく救いを見出すことが出来ません。
「死の列車」に乗り命懸けで逃げ出すか、ギャングとして生きていくかの二者択一の世界はまさに闇です。
ギャングに追われ命懸けの危険な旅を続ける彼らにとってはアメリカが光の世界と信じているのでしょうが、私には少女の青年に対する淡い恋心にこそ、この闇を照らす一筋の光を感じました。
(小田切 聖之介)
