放射線の危険度比べ

金属も突き抜けるガンマ線。紙一枚で防げるアルファ線。
本当に危険なのは…!?

ヨウ素は甲状腺にたまって甲状腺ガンなど、のどの病気になりやすい。
セシウムは筋組織にたまるから、筋肉量の多い内臓が危なくなる…等など、放射性物質そのものの名前はテレビや新聞でもよく報道されているのでもうすっかり覚えられている方も多いと思います。

では、直接生体に影響を与える放射線についてはどうでしょうか。
ヨウ素が怖い、セシウムが危ない…と、確かにその通りですが、私たちの健康を脅かす直接の原因は、それらから大量に放出されている放射線にあります。

ここでは、そんな放射線の正体や、生体に対する影響度の違いについてを簡単にお話したいと思います。
今回説明する放射線は、今では一般的になってしまった、α(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線の3種類の放射線についての、強さ、人体影響度の違いについてをお話します。

まず、α(アルファ)線とはそもそも何者かというと、2個の陽子と2個の中性子で構成されている、プラス電荷を持つヘリウム原子のことをいいます。
アルファ線は質量が大きいため、水中では通常短い距離(1mm未満)しか進めません。
体にぶつかっても紙1枚で防げてしまうものなので、洋服を着ていたり、マスクをしていれば付着や吸引による被曝はある程度防ぐことができます。
(ただ、半そでの服であったり、プールなど素肌を多くさらけだす場合は外部被曝の危険も十分に高まってきます。)

また、紙1枚で防ぐことができるという通過力の弱さが、内部被曝となるとまた違った側面を見せます。
なぜなら、放射線が体内に当たっても透過能力が弱いため、通過して体の外に出ることがないので、当たった細胞部分に活性酸素やフリーラジカルを生じさせてしまい、細胞異常を起こさせます。
一度食べ物などで摂取してしまったら最後、透過で体外に出ることはなく、身近な細胞に当たり、確実に細胞に影響を与え続けます。
素肌に付着する外部被曝、そして内部被曝の面を考えても、アルファ線は生体に強い影響力のある放射線だということがわかります。
生体にとって特別強い毒性を持つといわれるプルトニウムは、崩壊するときに、アルファ線を放出します。
(プルトニウムは肺に蓄積されると、肺がんのリスクが高まります。)

続いてβ(ベータ)線ですが、これの正体は、光と近い速さで放出された電子です。
速い分、物質を突き抜ける力がアルファ線よりは強く(長く)、大気中ですと数mの距離は進みます。
(ただ、ベータ線は放出時の速度に応じて透過距離は異なります。)
うすい紙などはたいてい透過しますが、アルミなどの薄い金属板は貫通することはなく止まります。
気になる生体影響度ですが、こちらも、外部被曝の影響より、内部被曝の影響のほうが強く現れる傾向があります。
体内では表面の細胞だけでなく、透過してそれより奥の細胞にも影響を与えてしまう場合があることがベータ線の危険なところです。
ベータ線を放出する放射性物質がとても多いのも特徴です。
有名なヨウ素、セシウム、ストロンチウムも、崩壊するときにはベータ線を放出します。

一方、γ(ガンマ)線は、これまで説明したアルファ線、ベータ線とは異なり、電子といった粒子が飛ぶものではなく、1種の電磁波と分類されています。
可視光線とも似ていますが、エネルギーや波長などが異なります。
太陽光線のうち、最も波長の短い紫外線よりも、ガンマ線の波長は遥かに短く、紫外線より強いエネルギーを持ちます。
ガンマ線は透過能力が高いため、体を貫通するので、外部被曝の危険が高いです。
食べ物から放射性物質を摂取し、その放射性物質がガンマ線を放出した場合も、付近の細胞だけでなく広範囲にわたって影響を与えます。
貫通力が高いために、表面だけではなく、体の奥深くまで傷つけてしまうのです。
ガンマ線が通ったところは電離作用が働き、フリーラジカルが発生します。
そしてDNAや細胞を傷つけていきます。
電離作用はアルファ線やベータ線などと比べると低くなりますが、広範囲に影響を与えてしまうという点がガンマ線の怖いところです。

以上、今回は3種類の放射線についてのお話しでした。
放射線の本当の危険度は、その放射線の性質や強さそのものにもよりますが、出す放射性物質の量も大きくかかわってきますので、できる限り放射性物質を取り込まないようにすることが一番大切ですね。

川野 ゆき