いよいよ「酵素栄養学」についての本題に入りますが、まずその開祖であるハウエル博士が、
1924年頃に勤務医として参加したリンドラー・サナトリウムについて説明しておきます。
なぜなら、この療養所がハウエル博士の酵素に対する興味を引き出す舞台になったからです。
リンドラー・サナトリウムは、30世紀初頭、ビクター・リンドラー博士が行なっていた「異化栄養療法」にその起源があります。
この療法は、人間の体の「同化作用(栄養素を消化・吸収する作用)と「異化作用(吸収した栄養素をエネルギーに転化する作用)とをもとに考えられたものです。
そもそも、リンドラー博士の父親であったヘンリー・リンドラー氏が、自らの経験を通して、この療養所を開設した経緯があります。
同氏は、自らが栄養士でありながら、肥満と糖尿病に苦しみ、小柄ながら体重は250ポンド(約113kg)あり、
減量のための食事コントロールを何度となく試みていましたが、まったく効果が上がりませんでした。
あるとき、友人の勧めで、東ヨーロッパで知名度のある栄養療法士、ネーイップ牧師を紹介されました。
牧師は薬物の代わりに、果物・野菜などを食事に取り入れ、きわめて自然に基づいた食事療法によって、リンドラー氏の糖尿病を改善させ、楽々と体重を40ポンド(約18kg)減量させたのです。
リンドラー氏はこの実体験を通して、栄養療法に一身をささげるべく、1904年に自らも医師となり、リンドラー・サナトリウムを設立しました。
そして後年、息子であるビクター・リンドラー博十が後継者となり、「異化栄養療法」と呼ばれる生の果物や野菜を使った栄養療法を広めるに至ります。
1925年、ハウエル博士もすでに同療養所に勤務していた頃、30日後に結婚を控えた女性が、「結婚式までに30ポンド(約14kg) の減量をしたい」と訪ねてきました。
リンドラー博士は、「半断食療法(ファステイングとのモニターとして彼女を治療しましたが、7日間で4ポンド(約1.8kg)ほどの減量しかできず、
このままでは、30日間で30ポンド(約14kg)の減量にはほど遠い状態でした。
そこで「半断食療法」を中断し、糖尿病患者にきわめて効果的な「生の食べ物によるダイエット療法』(これが「異化栄養療法」と呼ばれるものなのですが)を試みたところ、
1日に約2ポンド(約0.9kg)、 1週間で12ポンド(約5.4kg)減量し、次の1週間には8ポンド(約3.6kg)、最終的には34ポンド(約15.4kg) の減量に成功しました。
この女性の事例を分析してみたところ、奇妙なことに「半断食療法」を実践しているときより、
「生の食べ物によるダイエット」実践時のほうが多くの食べ物を食べたにもかかわらず減量していたのです。
その後、 152名の「半断食療法」と、207名の「異化栄養療法(生食療法とを比較したところ、減量に関しては明らかに後者のほうが有効であることがわかりました。
この療法のポイントは、食べ物の「量」ではなく、「質」に重点を置いていることです。
生の果物や野菜に含まれる成分が私たち人間の体に及ぼす計りしれない力をハウエル博士は知り、慢性病の改善という体験を通じて、数多くの臨床事実を積み上げていったのです。
つづく
グスコー出版 スーパー酵素医療 より抜粋