日本でも進めよう動物実験廃止を

先日10月23日、東京都渋谷で「毛皮反対デモ行進2011」が行われた。その模様はANOTHERチャンネル(動画)でお伝えした通りだが、動物虐待は毛皮問題にとどまらない。そのひとつ動物実験では…。

読売新聞が去る5月29日付で、大手飲料メーカーや化粧品会社の動物実験廃止の動きを伝えている。
それによると
「飲料大手の伊藤園が4月末で動物実験を廃止したほか、化粧品の資生堂も2011年3月までに自社での動物実験をやめ、2013年3月までに外注も含めて全廃を目指すことがわかった。企業イメージのほか、欧州で動物実験をした化粧品の販売が規制されるなど、動物愛護運動の強い欧米の市場をにらんだ判断。日本の大手企業が廃止を打ち出した例はないとみられ、他の企業にも影響を与えそうだ。」
とのことである。

この報道で浮き彫りになったは動物実験の廃止は、欧州での規制により仕方なくおこなうという極めて後ろ向きな姿勢である。
ここで欧州の規制の内容を確認してみよう。

【実験禁止】
・2004年9月より、EU域内での、化粧品の完成品のための動物実験の禁止
・2009年3月より、EU域内での、化粧品の原料および配合原料(原料の組み合わせ)のための動物実験の禁止
【販売禁止】
・2009年3月より、反復投与毒性、生殖毒性、毒物動態の3つの試験領域を除くすべての安全性試験において、代替法が確立されているかどうかにかかわらず、動物実験が行われた化粧品完成品、原料および配合原料の販売禁止
・2013年3月より、代替法が確立されているかどうかにかかわらず、上記3試験領域で動物実験が行われた化粧品完成品、原料および配合原料の販売禁止

これらは2003年2月27日のEU理事会(Council of European Union)において「販売禁止」と「実験禁止」の両方を盛り込んだ化粧品指令第7次修正案が承認され、同年3月11日に決議が公布されたものである。

報道にある通り、日本企業の動物実験廃止の動きは、こうした欧州市場への影響をにらんだ結果でしかない。もちろん理由はどうであれ、全廃という事になればそれは歓迎すべきことではある。
しかし、これで安心してしまってはならないのが現状である。

なぜなら、現在一部の領域においては、代替法が確立しなかったことを理由に、2013年まで猶予が与えられているからだ。しかも、この2013年という期限についても、同様に代替法が確立していないことを理由に、さらに延期を求める圧力がかけられる危険性は否定できない。

英国の動物愛護団体が入手した米国のP&Gの内部文書には、「大半の動物実験はEU外で行っているためEUの『実験禁止』には関心がないこと」、「『販売禁止』の延期を求めて強引なロビー活動をしてきたこと」、「それらのロビー活動を消費者に知られないようにしてきたこと」などが明記されていたと報告されている。
また、世界最大手のロレアルを始め巨大な化粧品産業を擁するフランス政府は、かつてEUの動きを阻止するためEU指令を不服として2003 年9月、欧州裁判所(European Court of Justice)に異議申し立てを行っている。ただし欧州裁判所は2005年5月、このフランスの上訴を棄却したため、EUの化粧品に関する動物実験禁止規程は維持されているが、今後もこのような動きが無いとは限らないのである。

昨年から、「化粧品の成分の動物実験廃止を目指す円卓会議」がすでに三回開催されているものの、目覚しい進展は伺えず、資生堂を除く大手化粧品メーカーは消極的な態度を示すのみである。
曰く「消費者に提供する製品の安全性の確保」、曰く「動物実験代替法がない」等を理由に、まったく改善の意思がみられない。

消費者に提供する製品の安全性を確保することなど、企業として当然ある。
しかし「動物実験廃止」=「安全性を低下」ではないはずである。
日本の薬事法は、化粧品について動物実験を義務づけていない。薬用化粧品などの医薬部外品については過去使われたことのない新たな原料を開発して配合しようという場合等にのみ、動物実験のデータを要求しているのである(もちろんこれも廃止なければならない)。
「新規原料開発」は法律で求められているわけではいのだ。 新たに動物実験をしなければならないような危険性のある化学物質を使わなければよいだけという簡単な事がなぜ理解できないのか。
利潤追求・効率重視の風潮がこれを生んでいるのである。

日本のこの現状を変えるためには、欧米の消費者たちのように、「動物実験している化粧品は使いたくない!」と声をあげていくしかないのである。
動物愛護団体や消費者団体が行うキャンペーンよりも、一人ひとりの消費者からもメーカーに動物実験反対の声をたくさん届けること、そして買わないこと、コレが一番だと思われる。事実、欧米ではこれがおおきな原動力となったのであるから。

そしてさらに重要な事は、法案化にあたっては動物実験の範囲について隙の無い物でなくてはならない。
動物実験は化粧品メーカーだけが行っているわけでは無いからである。
いかなる産業においても、国内外に関わらず動物実験の廃止を促進する法案であるべきと考える。

まずは身近な第一歩からの取り組みが大事である。
日本でも、消費者が動物実験していない製品に感心を高めていく行動は益々重要である。製品選択の際は意識をし、声を出して行けば現状は必ず改善されるであろう。
動物実験していない製品に是非感心を持ってもらいたい。

(安東 一雄)

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