・人間のあるべき姿
・筋力が上がると○○も上がる
・年齢と共に低下していく筋力
体のどこにも痛みが無いという状態は、本当に恵まれていると思います。
しかし、普段はそれが当たり前のように感じていて、風邪を引いたり怪我や病氣をした時に
改めて健康でいる事の有難みが分かります。
一方で食などの悪習慣を続けている人の中には、体に不調が出ても改善しない人がいます。
しかも周りに自分と同じような人がいると、不調があるのが当たり前かのように思ってしまうのです。
このような人達が昔の生活を見たら、びっくり仰天する事でしょう。
山梨県に棡原村という、かつて長寿村と呼ばれた村が東京都との県境にありました。
周りを山に囲まれた地域で村人は農林業で生計を立てていました。
村にはバスも通っていない自然豊かな場所だったため、その環境が健康長寿に大きく影響したと言われています。
村の人は急斜面で農作業をするので足腰は頑丈で、食べるものは畑で採れた
米、野菜、豆類、川魚等を食べていました。いわゆる日本の伝統食だったのてす。
空氣も水もきれいな環境で、亡くなる直前まで働いて最期はコロッと逝く理想的な生き方をしていました。
しかし、1954年を境に村の様子が変わり始めます。
ふもとの町に繋がる道路が開通して、バスが通るようになったのです。
すると若い人を中心に村の農業や林業を捨てて、都会へ出稼ぎに行く人が出てきました。
そして、働いてもらったお金で加工品やお菓子などを村に持ち帰るようになります。
村のお年寄りは、そのようなものには見向きもしませんでしたが、若い人は好んで食べるようになりました。
こうした近代化が進んだのを機に、棡原村の村人にも病氣が見つかりだしました。
交通が便利になり車を運転し始める人も出てくると
山の斜面で農作業をする生活と比べて、どうしても運動不足になってきます。
すると肥満、糖尿病、高血圧などのいわゆる生活習慣病の症状が表れます。
やがて若い人が親より先に亡くなるという、何とも悲しい逆さ仏現象が起きてしまったのです。
和食を食べてしっかり体を動かして丈夫な体を保っていれば
高齢になっても元氣に働く事が出来ますし、あるいは発病を遅らせる事が可能です。
一方でたとえ若くても食習慣や生活習慣が乱れると、若くても病氣になってしまうのです。
近代的な生活が当たり前の世の中になり、多くの人が若いうちから未病を抱えるようになりました。
その1つが低体温です。
体温は上げようと思っても、自分の意志でコントロール出来るものではありません。
体温の調節は生命を維持するために極めて重要な機能であり、ホメオスタシスの働きの1つだからです。
では、どうすれば体温を上げることが出来るのでしょうか。
人間の体は何もしなくても、生命を維持するために多くのエネルギーを消費しています。
成人が1日に必要とするエネルギー量は男性が2000~2200kcal、女性は1800~2000kcalです。 そしてこのエネルギー量の約60~70%は基礎代謝に使われます。
基礎代謝とは、呼吸や心臓の拍動のようにじっとしている時や睡眠中にも行われる体に必要最低限のエネルギーです。
そして、基礎代謝に回されるエネルギーの多くは体温維持に使われるため、
基礎代謝量が上がれば体温も上がるという正比例の関係にあります。
低体温の人は基礎代謝量が低いため低体温、低血圧、疲れやすい、便秘などの症状がよく表れます。
それもそのはず、体温が1℃下がると基礎代謝は約12%も低下してしまいますので
体の不調が出てくるのは無理もない事です。
また、基礎代謝の12%は30分くらいのウォーキングをした時のエネルギー消費量に相当します。
本来なら消費しているはずのエネルギーが低体温の人は消費できないので
栄養を吸収しにくかったり、老廃物を溜め込んでしまいます。
逆に言うと体温が1℃高くなれば、30分のウォーキングをするくらいのエネルギーを
自然に消費する体になるということでもあります。
つまり余分な脂肪がつきにくく、痩せやすい体になります。
体温を上げるには基礎代謝を上げればいいのですが、それには筋肉量を増やすことが大切です。
なぜなら体内で熱を最も多く持っているのが、実は筋肉だからです。
人間の筋肉の70%はおへそから下にありますので、ウォーキングやスクワットをすると効果的です。
筋肉を鍛えるメリットはそれだけではありません。
体内のミトコンドリアが増えて、細胞から元氣になります。
ミトコンドリアは細胞の中に存在していて、人間の活動に必要なエネルギーを作り出す生産工場の役割をしています。
ミトコンドリアは全ての細胞に存在していますが、特にエネルギーをたくさん使う場所に多いのが特徴です。
体内のミトコンドリアの8割が筋肉に集中しているので、筋肉量を増やす事は
エネルギー生産を上げる為に欠かせません。
特に足の筋肉にミトコンドリアが多いので、この点から見てもウォーキングやスクワットは
体の機能を上げるのに効率的と言えます。
逆に筋肉が少ないとミトコンドリアの数も少なくなり、質が悪いものになってしまいます。
古いミトコンドリアが何とか頑張って働くのですが、エネルギー生産量は少ないため代謝が悪くなります。
筋肉を鍛えるとミトコンドリアが増えるので、質の悪いミトコンドリアは排出されて
元氣な細胞に生まれ変わります。
それから女性に多い不調も筋肉量と関係があります。
特に女性はもともと男性と比べて筋肉量が少ないため、女性が運動不足になると
筋肉が減って血流が弱くなります。男性よりも体が冷えやすいのです。
このような場合も、まずは下半身の筋肉を鍛えることをお勧めします。
足の筋肉は「第2の心臓」とも呼ばれ、血液が循環する上で大きな役割を担っています。
その代表的な役割が2つあります。
1つは血流が良くなること。
足の筋肉がポンプとして働き、足の末端から心臓へ重力に逆らって血液を押し上げて流れを良くします。
2つめは発熱作用です。
筋肉自体に熱を作る働きがありますので、筋肉を鍛えれば体温が上がり、血液循環に相乗的な効果をもたらします。
ミトコンドリアは体温が37℃になると活発に働きます。
筋肉をつけて代謝が良くなり、さらに体温が上がるとミトコンドリアが増えて細胞から元氣になります。
筋肉量はライフスタイルや運動などの生活習慣によって決まります。
筋肉は使わないとどんどん減っていきます。
普通に生活している人の場合、筋力は1年で1%減少していきます。
20代の人の筋力と比べると、70代になると3分の2まで減少します。
「老」という漢字は、背中が曲がって顎が前に出る姿を表していると言われています。
高齢になると背中が曲がって猫背になる人がいますが、それは背骨が曲がっているのではなく
姿勢を保つ筋肉が衰えるためです。
また、つまづいて転倒した際に骨折したのを境に歩けなくなるのも、急激な筋力の低下によるものです。
「老化は足からやってくる」と言う言葉がありますが、足腰をしっかり動かして心身の老化を予防しましょう。
清流の水がよどみなく流れていくように、昔の人は食べたものをエネルギーや
筋肉などに替えて日々の活動へと昇華していました。
先にご紹介しました長寿を全うした棡原村の人は、人間の本来の活動する姿を現代に伝えてくれていました。
しかし、現代人は肉類や加工品など上手く消化できないものをたくさん食べ、
さらに食べ過ぎも重なって、まるで濁った沼のように代謝が滞っています。
生きているうちは誰のお世話にもならずに自分の力で生活したいものです。
食事を玄米菜食にするのはもちろんの事、筋力をつけて体内の循環を良くしましょう。
山本 和佳