大阪安治川河口を舞台に、河っぷちの食堂に住む少年と、対岸に繋がれた廓舟の姉弟との出会いと別れを描く。第十三回太宰治賞を受賞した宮本輝の同名の小説を映画化した秀作です。
初公開年月 1981/01
上映時間 105分
監督:小栗康平
製作:木村元
原作:宮本輝『泥の河』
脚本:重森孝子
撮影:安藤庄平
出演:
田村高廣、藤田弓子、朝原靖貴、加賀まりこ、桜井稔、柴田真生子、初音礼子、西山嘉孝、蟹江敬三、殿山泰司、八木昌子、芦屋雁之助
第13回太宰治賞受賞の宮本輝の同名小説を、これが監督デビューとなる小栗康平が映画化。
河口の食堂に住む少年と対岸に繋がれた船で売春を営む母を持つ姉弟との出会いと別れを軸に、社会の底辺で生きる人々の姿をきめ細やかに描いた人間ドラマ。
日本が高度成長期を迎えようとしていた昭和31年。大阪・安治川の河口で食堂を営む板倉晋平の息子・信雄は、ある日、対岸に繋がれているみすぼらしい船に住む姉弟と知り合う。その船には夜近づいちゃいけないと父からは言われていた……。
全編モノクロームの映画ですが、公開年をみればわかるようにあえてモノクロームで撮影した作品です。
しかし、昭和31年という時代背景を表すにはこれしかないというくらいしっくりしています。
タイトルの泥の河は大阪市の土佐堀川なのですが撮影は、名古屋市の中川運河で行われたそうです。
昭和31年当時の土佐堀川がどれ程の汚れ具合だったか見当もつきませんが、モノクロームの映像はそのあたりを旨くカバーしているように思います。
食堂の少年のぶちゃんは貧しい中でも屈託なく暮らしています。それはひとえに両親の人柄でしょう。
それは、「舟には近づいてはいけない」といいながらも姉弟を家に呼んで暖かくもてなすことでもわかります。
しかし、少年もいつまでも両親の守られてはいられません。否が応でも世間の厳しさ、社会の矛盾と向き合わなければならない日がやってくるのです。
楽しみにしていた天神祭りの日、初めてもらったお小遣いをのぶちゃんは落としてしまいます。しょげているのぶちゃんを励まそうと、きっちゃんは強引に船の家に誘います。
夜の廓舟、のぶちゃんに母親の職業がばれてしまうのは当然なのに、なぜきっちゃんはのぶちゃんを船に呼んだのでしょう。
翌日、きっちゃんの舟は岸を離れます。「きっちゃーん!」と呼びながら追い続けるのぶちゃんは、親しい人と別れるという哀しさを初めて知ることになります。
去ってゆく船はあたかも旧い時代の終わりを象徴するかのようです。
(小田切 聖之介)

