・「たくさん食べる=健康」という誤解
・食べ過ぎに陥りやすい現代食
・○○の摂り過ぎは頭の働きが悪くなる!?
生命は過酷な環境におかれると、その潜在能力が発揮されて生命力が強くなります。
人類も数々の厳しい状況にさらされ、生命の危機に直面しながらも
代々命を繋いできています。
長い歴史の中では氣候の変動、災害、食糧不足など様々な危機にあってきました。
ほとんどの時間を空腹状態で過ごしていたので、飢えに対応できる体になっています。
一方、食べ物が何でも手に入るようになった今の日本では、飢えに苦しむ人よりも
食べ過ぎている人の方がはるかに多く、皮肉な事にそれによって生活習慣病が増えてしまいました。
「たくさん食べる=健康な証拠」というのは大きな誤解で、
たくさん食べて得をするのはあなたではなく、経済のため、そして医療業界のためなのです。
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日本人がたくさん食べるようになったのには、食べ物が手に入りやすくなった事以外にも理由があります。
日本に欧米型の食事が入ってきて、動物性脂肪の摂取量が増えると共に食事量が増えていきました。
中でも高脂肪の食事に急激に変わっていったのが沖縄県です。
沖縄県は1980年まで男女ともに日本一の長寿県でした。
伝統食を食べていた沖縄の人の食事は米軍の影響を受けて、大きく変わっていきました。
1960年代には沖縄基地の食堂が解放されて、県民にステーキやファーストフードなどの食事が広がりました。
これによって、1960~1970年代にかけて沖縄県民の脂肪摂取量が急増し、肥満も増えていったのです。
2015年に行われた調査では、沖縄県の寿命が男性は36位、女性が7位まで下がっています。
また、30~60歳の働き盛りの死亡率は、男性がワースト5位、女性がワースト7位という結果から
年代を追うごとに健康状態も悪くなっている事が伺えます。
高脂肪の食事をしているとメタボになりやすく、糖尿病、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、がんなど
様々な生活習慣病にかかるリスクが高くなります。
さらに脂肪は嗜好性が強く、食べるほどさらに求める氣持ちが強くなり、
止められなくなるという問題があります。
これは脂肪を摂取すると脳内でドーパミンやエンドルフィンが分泌されるためです。
これらには興奮、高揚の作用があるので、また食べたいという欲求が生まれます。
脂肪には強い嗜好性があるため、油っこいものを食べるとさらに欲するようになります。
海外でも肥満の問題を抱えており、ハンガリーでは肥満防止を目的として
ポテトチップス、市販のケーキ、スナック菓子、清涼飲料水など
糖分や塩分が高い食品に課税制度が設けられています。
課税によって消費者が購入するハードルが上がるため
食べるのを控える人も出てくるという狙いがあるのですが、
それほど個人の意思では高脂肪食を止めるのが難しいとも言えます。
さらに脂肪と砂糖が合わさると、食べた時の多幸感が増幅して
その中毒性によって味覚が狂わされてしまいます。
食品メーカーは、この原理を利用してケーキ、クッキー、パン、菓子パン、チョコレート、
スナック菓子、乳製品、インスタント食品、冷凍食品など、様々な加工食品を作り出しました。
商品をたくさん売りたい、繰り返し買ってほしいというメーカーの思惑通りに
消費者はこれらを食べ続け、体に悪いと思っていてもなかなか止められないという
一種の中毒にさせられてしまっています。
「分かっているけど、止められない」という消費者心理につけ込んで
メーカーの儲けたいという狙いがすっと忍び込んでいるのです。
このように、なかなか止められない高脂肪の食事ですが、改善するのは意外に簡単です。
脂質の1種であるガンマ・オリザノールを摂る事をお勧めします。
マウスの実験によると、ガンマ・オリザノールをエサに混ぜたところ、
マウスは高脂肪食を選択しなくなり、体重が減少しています。
ガンマ・オリザノールは玄米に含まれている良質な脂質です。
主食を玄米に変えると、揚げ物など油をたくさん使った料理を食べる量が明らかに減っていきます。
良質な脂質を適切に摂取することで栄養が満たされるので、体に悪い脂肪を欲さなくなるのです。
先程も述べましたように、脂肪にはある種の中毒性があるため、
ただやみくもに摂取量を減らそうとしても上手くいかず、我慢できなくなって
結局元通りの食事に戻ってしまう事になりかねません。
良質な脂質に入れ替える方法は無理なく実践できて、体にも有効に働くので良いことづくめです。
玄米以外にも魚やアボカド、亜麻仁油、インカインチ油からも良質な油を摂る事ができます。
これらに含まれる油はオメガ3に分類され、細胞を活性させます。
オメガ3は大変良質な油ですが、意識して摂らないと体に入ってきません。
外食や加工食品には全くと言ってよいほど使われていないため、自分で摂るよう心がける事が大切です。
ここで、空腹についても触れたいと思います。
人間は飢えと戦ってきた期間が長く、体も飢えに対応出来るようになっています。
飢えに直面しながらも命を繋いできたという事実が、その事を証明しています。
空腹になると、体の様々な機能が一氣に活性します。
体内の免疫細胞が体内の細菌や異物などをよく食べるようになり、免疫力が上がります。
病氣やけがをすると食欲が減るのは、体が免疫力を上げようとしているためです。
また、空腹になると長寿遺伝子が活性して病氣を予防して、老化予防、健康長寿へ促してくれます。
それだけではありません。空腹になるとグレリンというホルモンがたくさん分泌され、
心臓機能の促進、自律神経の調整、抗ストレス、記憶力の向上、ボケ予防などの生理作用がもたらされます。
飢えと戦った先人から生命力の強い体を与えてもらったのです。
血糖値の観点からも、体は飢えに対する強さを持っている事が分かります。
空腹になると血糖値が下がりますが、そうした時に血糖値を上げるホルモンはアドレナリン、
ノルアドレナリン、グルカゴン、成長ホルモンなど10種類ほどあります。
しかし、逆に血糖値が急上昇した時(食べ過ぎた時)にそれを下げるホルモンはインスリンしかありません。
人間の体は飢えを乗り越える力はありますが、飽食には対応できないのです。
たとえ体に良いものであっても、食べ過ぎると血糖値が上がるため、体に負担をかけてしまいます。
美味しいものを食べるのは楽しみでもありますから、時には食べ過ぎてしまう事もあるかもしれません。
しかし、普段は節度ある食事をする事が大切です。
1日2食にして空腹を感じる時間をちゃんと取る事によって、健康な体が作られます。
山本和佳