・免疫とは
・段階的に働くシステム
・自然免疫と獲得免疫
わたし達は常に細菌やウイルスに囲まれて生きています。
その大半は未知のものであり、それでも把握できていない量や種類の微生物に対応する必要があります。
●免疫とは
体に入ってきた異物の中には、体に害を及ぼすものもあります。
免役機能は自己とそうでないものを見分け、体に害を及ぼすものに対して攻撃したり、
排出するよう働きかけることで病氣や感染症を防ぎ、体を守っています。
あらゆる生き物は自然界の中で共存し、互いに作用しあっています。
そういう中で相手は自分にとって危険な存在なのか、同じ場所に一緒にいても大丈夫か、
餌として食べても良いか、戦うのか逃げるのかなどを見極めながら生きています。
これと同じ事が体内でも起きています。
まず、外から侵入してきたものが体に害を及ぼすのかどうかを見分けます。
空気中から、または食べ物や飲み物から入ってきたら、免役機能は次のように働きます。
1.侵入者を非自己と認識する。
2.侵入者が体に害を及ぼす存在かどうか厳格に見分ける。
3.害になる侵入者を速やかに無害化して排泄する。
4.侵入者の情報を記憶する。
侵入者のうち、害になるものの多くは風邪、インフルエンザ、胃腸炎など
感染症を引き起こす微生物です。
一方、体内で有用に働く微生物や、または無害なものに対しては
免役機能は発動しないよう調整されています。
●段階的に働くシステム
体を病原菌やウイルスなどから守るために働く免役機能。
簡単には侵入できないよう、体の外側には保護する役割もあるのです。
まず外界と接している目、口、鼻、耳、皮膚が物理的に侵入しにくいよう防御壁となっています。
また、口から肛門まで通っている管も消化吸収される前の
体の外側であり、表面の粘膜が防御の役目も果たしています。
そして、ここからは免疫細胞による対処が必要になります。
体には生まれながらに備わっている「自然免疫」と、
一度侵入してきた病原体を記憶して抗体を作り出す「獲得免疫」があります。
それぞれが連携して、体の免疫システムが成り立っています。
皮膚や粘膜のブロックが破られて体内に侵入すると、ただちに自然免疫が攻撃を開始します。
自然免疫として働く免疫細胞はマクロファージ、好中球、樹状細胞、NK細胞などです。
このうちマクロファージ、好中球、樹状細胞は食細胞と呼ばれ、病原体や死んだ細胞を食べて分解します。
マクロファージや樹状細胞は組織に存在していて、病原体を取り込んで分解します。
さらにサイトカインという物質を放出して、好中球を呼び寄せます。
普段血液の中にいる好中球は感染部分に集まって来て、病原体を貪食します。
好中級はとても攻撃力が高いですが寿命は短く、役目を終えると死滅し、
マクロファージに処理されたり体の外へ排出されます。
このようにマクロファージは自然免疫の司令塔として働いています。
樹状細胞も病原体を取り込んで分解します。
そして特徴とも言えるのが、自身で分解した病原体成分を
抗体を作る前のヘルパーT細胞やキラーT細胞(いずれも獲得免疫)へ渡す点です。
つまり、樹状細胞は自然免疫から獲得免疫への橋渡しをしているのです。
そしてNK細胞はウイルスを駆逐するスペシャリストです。
普段は血液中を循環していますが、細胞がウイルスに感染すると活性化して感染部位へ駆けつけます。
NK細胞はウイルスに感染した細胞を破壊しながら、サイトカインを放出して
マクロファージや樹状細胞を呼び寄せます。
そして食作用を発揮して、ウイルスをどんどん自身の中に取り込んで分解していきます。
そして、ここでも樹状細胞は獲得免疫に発動するよう働きかけます。
●自然免疫と獲得面絵
第一段階の前衛部隊である自然免疫に誘導されて、獲得免疫が発動します。
獲得免疫はその名の通り、一度侵入した細菌やウイルスの情報を記憶して抗体を作って戦います。
獲得免疫を担っているのは、主にリンパ球です。
1つのリンパ球は特定の1種類の病原体だけに対応するよう作られます。
人間が感染する病原体は何百万種類にものぼると言われ、
体内ではそれだけ多くの種類のリンパ球を作り分けられています。
わたし達は一生の中で数えきれないほど多くの病原体に遭遇します。
まず、種類を問わず攻撃する自然免疫が最前線で活躍しますが、
それだけでは駆逐しきれない病原体もたくさんあるのです。
感染したら、直ちに駆けつけて病原体を攻撃する自然免疫の細胞、
そして駆逐のプロフェッショナルとも言える獲得免疫の二段構造で
免疫システムは体を守っています。
ある病原体が初めて体内へ入って来ると、すぐに自然免疫が発動しますが、
獲得免疫が発動するまでには数日かかります。
そして、同じ病原体が2度目以降に侵入してきた時は、獲得免疫も素早く発動するようになります。
●生まれてから獲得免疫が出来るまで
生まれたばかりの赤ちゃんは、母親からもらったわずかな種類の抗体しか持っておらず、
その効力は半年ほどで無くなります。
乳幼児期は多くの感染症にかかりますが、それは生まれ持った自然免疫で
対応できなくなった時に活躍する獲得免疫の抗体がまだ発達していないためです。
発熱、下痢、発疹などにかかり、お母さんも我が子のお世話に時間を要する時期です。
様々な病原体が体に入って来ると、その都度それらに対応できる抗体を作り、
必要な分だけコピーされます。
再びその病原体が入ってきた時は、自然免疫とともに獲得免疫も素早く発動できるようになっています。
このように獲得免疫が発達してくと、10歳頃には感染症にかかる頻度が少なくなります。
何氣なく過ごしているようでも、体の中では日々免疫細胞が病原菌やウイルスと戦っています。
今日無事に過ごせた事も、体内では免疫システムがフル回転して働いてくれたおかげです。
体を維持していくために重要な働きをする免疫機能ですが、
過度なストレスを受けると機能が低下してしまいます。
また、年齢と共に免疫細胞は減少していきます。
このように様々な要因で機能低下するのですが、裏を返せば
自分の心がけ次第で免疫機能を高めることも十分可能なのです。
免疫機能を正常に働かせ、免疫機能を低下させないようにする事が大切です。
そして、日々の食事や生活習慣がその鍵を握っているのです。
この続きは、また次回にお伝えします。
山本和佳