●腸内細菌が免疫の要
●体の中で連携している
●免疫が高すぎても良くない
前回に続き、免疫についてお話し致します。
●腸内細菌が免疫の要
免役機能のうち70%は小腸、10%は大腸が担っています。
消化・吸収するだけでなく、病氣などから体を守る砦としても重要な器官です。
腸の表面面積はテニスコート1。5面分にもなる広さで、
様々な腸内細菌が棲みついていて、善玉菌が多いと免疫力も高いです。
腸内には1000種類以上、100兆個もの膨大な腸内細菌が住んでいます。
生まれてくる時にお母さんから腸内細菌をもらい、さらにその後の食生活や生活習慣によって
一人一人異なる完全にオリジナルな腸内細菌叢が作られていきます。
●自律神経や内分泌系と連動している
免役機能は自律神経や内分泌系などと連携して
体を健康な状態に保とうと働いています。
しかし免疫力が低下すると、自律神経や内分泌系も影響を受けて
バランスを崩してしまうのです。
免役機能はその時の疲労度や体調、疾患の有無や
ストレス耐性などによっても上がったり下がったりします。
体にストレスを受けると、人間は免役機能を崩しやすくなります。
ここでいうストレスは以下のような精神面以外のものも含みます。
生物学的ストレス;感染症
社会的ストレス;環境(家庭、学校、職場、地域など)
物理的ストレス;騒音、光、急激な温度変化
化学的ストレス;農薬、化学物質、薬、食品添加物、重金属、タバコ、アルコール、大気汚染など
現代人はあらゆるストレス要因に囲まれて生活をしています。
ストレスを受けると自律神経のうち交感神経が優位になります。
交感神経は日中の活動時に活発に働きますが、ストレスを受け続けると
交感神経の緊張が続いて自律神経のバランスが崩れてしまうのです。
人間の体にはホメオスタシスが働き、体の機能を一定に保とうとします。
しかし、ストレスが過剰にかかったり慢性的になると
自律神経、免疫系、内分泌系に影響してホメオスタシスのバランスが崩れます。
そのしくみを少しお話しします。
自律神経は脳の視床下部がコントロールしています。
ストレスを受けると視床下部からアセチルコリンという神経伝達物質が副腎へ働きかけます。
それを受けて副腎からノルアドレナリンやアドレナリンが放出されて
心拍数の増加、血圧上昇、血糖値上昇、消化器の活動抑制などの作用がおこります。
つまり非常事態を察知して、戦闘モードに入るということですね。
一方、内分泌系は脳の脳下垂体が司令塔として働いています。
ストレスを受けると、副腎へコルチゾールを分泌するよう指令を出します。
ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールはストレスに対応するため
グルコース生成、血糖値上昇、抗炎症作用、免疫抑制など体へ作用します。
交感神経はやる氣全開で仕事や勉強をしたり、
身に危険が迫った時に即座に対応するなど、生き抜いていくために大切な働きをしています。
しかし交感神経がずっと活発だったら、体も心も疲弊してしまいます。
免疫機能に異常をきたすと、様々な形で体に症状が表れます。
<免疫不全>
ストレス以外にも体に疲労が溜まる、皮膚や粘膜に何らかの異常が表れると
マクロファージなど免疫細胞がウイルスや細菌などを食べる力が弱くなります。
つまり免疫力が低下して、通常は問題にならないような病原体に感染しやすくなります。
また、重症化しやすく治りにくい。
<獲得免疫の過剰反応>
病原体を認識して抗体を作るT細胞・B細胞はとても頼もしい存在ですが、
時に誤作動を起こすことがあります。
本来は異物と見なさない相手を攻撃してしまうのです。
花粉、ハウスダスト、食松などによるアレルギー症状は
このように獲得免疫が過剰反応した結果、起こります。
<免疫の暴走>
免疫力を高めましょうとお伝えしていますが、何事もバランスが大切であり
過剰になってもいけません。
免疫細胞の攻撃対象が自分の細胞へ向かうと、関節リウマチやⅠ型糖尿病を引き起こします。
わたし達を取り巻くストレス要因は、自分の努力だけでは避けられないものもありますが、
対処出来ることに関しては避けることが大切です。
玄米菜食中心の食生活をして、食品添加物が入っている加工食品は極力摂らないよう心掛ける。
すると免疫力が上がり、温度変化に対する対応力が上がる、感染症にかかりにくくなる・・・
このように直接的にストレス要因を避けて免疫力を上げることによって、
間接的にストレスを減らしていくことも可能です。
現代はストレスを受けやすい環境になっている上、
油断するとスマホやパソコンなどに睡眠時間が奪われやすいとも言えます。
意識的に食習慣・生活習慣を整えることがとても重要です。
●腸内環境を整える
免疫力の8割は腸に由来するのですから、腸内環境を整えることは必須条件です。
これを抜きにして健康は成立しません。
腸内の善玉菌が増えて優勢になると、血液がきれいになって細胞の生まれ変わりも盛んになります。
そして、あらゆる体の活動は全て酵素が関わっています。
食事から酵素を摂ることと、体内の酵素を無駄遣いしないで効率的良く使うこと。
酵素の点から見ると、この2点が非常に大事です。
また、それが免疫力を高める必須条件でもあります。
玄米菜食はこうした条件を満たしやすく、
なおかつ腸内環境を乱す食べ物を控えることが比較的容易にできるのも大きな利点です。
腸内環境が悪い人は必ずと言ってよいほどGI値の高いものを食べています。
GI値とは、食後に血糖値が上がる度合いを数値化したもので、
数値が高いほど食べた後の血糖値上昇率が高いことを示します。
白米、パンや麺類など小麦製品、肉類、動物性食品、白砂糖などはGI値が高く、
これらを日常的に食べている人は本当に多いです。
先にも挙げたストレスによっても血糖値は上昇しますので、
現代人は血糖値が上昇と下降を繰り返して不安定な状態です。
また、血糖値の乱高下は血管を傷つけるため、循環不良が起きてしまいます。
消化に負担がかかり、酵素や補酵素となるビタミン・ミネラルも無駄遣いしてしまいます。
現代人は酵素ばかりか、ビタミン・ミネラルも不足しています。
ビタミン・ミネラルは補酵素として働くほかにも、それぞれ独自の役目もある
大変重要な営養素ですので、体内で不足すると体のあらゆる場所に不調が出てきます。
免疫力は放っておくと加齢と共に低下していきますが、今は若い人も免疫力が低く
不調が慢性的になっていて、すでに症状を自覚していない事も珍しくありません。
免疫機能は自律神経や内分泌系、それ以外のメカニズムとも連携しています。
腸内細菌とも密接に関わっているため、腸内環境を整えることは大変重要です。
例えば、自律神経のバランスを整えることでも知られるセロトニン(幸せホルモン)は
脳で5%、腸内で95%が分泌されています。
腸内環境が悪化するとセロトニン分泌は減ってしまいますので、
心の状態にも悪影響を及ぼします。
正しい食事は健全な精神を作ります。
現代人にストレスをかけている要因は、ほとんどが不自然なものです。
ですから規則正しい生活をして、玄米菜食の食事、適度な運動をすることが
免疫力を上げるという点においても、とても大切です。
山本和佳