・認知症と腸の関係
・加齢とともに悪玉菌が増える
・肉食動物の宿命
食物繊維は体に吸収されないことから、昔は体にとって不要なものと考えられていました。
しかし、食物繊維の不足が健康上問題があると言われるようになっていきました。
それまでの説を覆す事になったのが、イギリスの医師が立てた仮説でした。
1972年にイギリスのデニス・バーキット医師が
食物繊維の摂取量が少ないと、大腸がんのリスクが高くなる」という仮説を発表したのです。
この仮説が生まれたのは、アフリカで医療活動をしていた時にアフリカ人には腸の疾患が無いことに氣づいた事がきっかけでした。
そこで、イギリスの学生と排便量について調べてみると、アフリカの田舎に住んでいる人の
1日当たりの排便量は470g、イギリスの学生は104gと大きなあったのです。
また、食べてから排泄するまでの時間がアフリカ人は36時間だったのに対し、
イギリスの学生は72時間以上かかっていました。
食物繊維には水分を抱える性質があるため、便の量を増やして排便をスムーズにしてくれます。
食べたものが体内に留まる時間が2倍以上も違うということは、
食物繊維が不足した結果、体内の不要物を排泄するのに時間がかかっている証拠です。
この調査結果により、バーキット医師は
「食物繊維が不足すると腸の疾患にかかるリスクが高くなる」という仮説に至ったのでした。
食べたものが体内に留まる時間が2倍以上も長いと、その分腸内腐敗も進みます。
そして、現在の日本人も以下のような理由で食物繊維が不足しています。
・野菜や果物、豆類、海藻の摂取不足
・白米を食べている
・みそや納豆など発酵食品を食べる量が減った。または食べていない。
・肉、乳製品など動物性食品を食べる量が激増した。
・インスタント食品や加工食品を食べる量が激増した。
こうした乱れた食生活から玄米菜食へ改善することが大切です。
食物繊維とその他の営養もあり、食材の味が美味しいと感じるようになります。
玄米には営養も噛み応えもあるので、調理工程を簡単にしても美味しく食べられます。
忙しい人にも、玄米菜食はとてもお勧めです。
●加齢によって減少する善玉菌
健康な人も加齢と共に腸内の善玉菌が減少していきます。
若いうちは食生活が少々乱れても、改善したら腸内細菌の適応も早いですが、
年を重ねるほど無理が利かなくなります。
腸内のビフィズス菌が減っていき、悪玉菌が増えていきます。
また、アルツハイマー型認知症の患者の多くは
健康な人よりも腸内の悪玉菌(ウェルシュ菌)が非常に多い事も立証されています。
食事を疎かにすると、若くても腸内腐敗を起こして便秘や冷えなど体に不調が表れますが、
中年以降は、さらに悪玉菌の増加に拍車がかかり、体はどんどん老化してしまいます。
動物の種類により食性が異なり、肉食動物の腸内はウェルシュ菌が多いのが特徴です。
ウェルシュ菌の増殖によって腸内腐敗が進むのは、どの生物にも共通しています。
そのため、草食動物より肉食動物の方が短命に終わります。
1984年、日本で長寿地域として知られていた
山梨県棡原村(現 上野原市ゆずり原)に住む高齢者17人(平均年齢86歳)と、
東京都に住む高齢者37人(平均年齢68歳)の腸内細菌の調査によれば、
棡原村の人の腸内はビフィズス菌が多く、ウェルシュ菌が少ないという結果が出ました。
棡原村の高齢者の食事に共通していたのは、
米、麦、そば、雑穀を含む穀類、豆類、いも類、海藻など
食物繊維の摂取量がとても多いこと。なおかつ低カロリーで少食だったのです。
国が定める食物繊維の1日当たりの目標摂取量は、男性が19g以上、女性が17g以上ですが、
棡原村の人は平均28.8gも食物繊維を摂っていました。
こうした食事が便通を良くして悪玉菌の増殖を抑えて、善玉菌を増やしていたのです。
棡原村は交通の便が悪い場所だったため、インスタント食品など食べていなかったことも
腸内環境を良い状態に保っていた一因でした。
その後この村にも道路が通り、都会との行き来が出来るようになると、
棡原村にも食の近代化が押し寄せて、村の人も加工食品も食べるようになり、
昔のような長寿地域ではなくなってしまいました。
今では日本中どこに住んでいても、コンビニ食品やレトルト食品などを
簡単に手に入れられますので、個人が食習慣を意識して改善することが大変重要です。
●腸で血液が作られる
血液中に酸素や二酸化炭素を運ぶ赤血球は、
この赤血球は赤血球母細胞の中で育てられ、一度に数十個の赤血球が作られます。
赤血球母細胞は腸内の絨毛組織のみに存在しています。
食べたものが血液になり、体内を循環して営養や酸素の供給と老廃物の排泄を繰り返します。
腸内環境を良くするかどうか、血液がきれいかどうかは自分次第ということなのです。
西洋医学では、骨髄で血液が作られるとされています。
骨髄でも作られることはありますが、それは腸で血液を作れなくなった時の緊急手段です。
西洋医学を信じると、体を部分で捉えるようになって
食べたものが自分の体を作っているという意識が薄れていくでしょう。
また、食事を軽視する考えに流れやすいと思います。
腸で血液が作られ、腸から吸収された栄養が全身に運ばれていく。
その血液が汚れたら循環不良を起こして病氣にかかる。
それは。病氣になる原因は自分の食事や習慣にあることを意味しています。
そして、自分次第で予防できると言い換えられます。
そうした考えのもとで自立した行動をとることがとても大切です。
「自分の体の中には100人の名医がいる」という言葉があります。
自分の体には自然治癒力がもともとあることを自覚して、
その力を少しでも引き出すような食事や習慣を続けましょう。
山本和佳