・独自の判断で働いている
・異物から守るバリア機能
・腸と子どもの自閉症について
人間にとって美味しい食事は、この上ない楽しみでもあります。
美味しいと味わうのは一瞬のことで、飲み込んだ後は
体内で消化・分解が行われます。
その量は、なんと年間1トンにも上ります。
今回は、毎日盛んに営養吸収を行っている消化器官についてお話し致します。
●消化管について
消化管がそれぞれの役割を性格に行うために
ホルモンと酵素が重要な役割を果たしています。
体に食べ物が入っると、消化管が刺激を受けて
食べたものの成分の種類などが判断されます。
その情報に基づいて、神経伝達物質やホルモンが分泌されます。
神経伝達物質は信号を送り、消化液の分泌や胃の門を開くなど
消化活動が適切に行われるように指令を出します。
ホルモンは酵素を作る指令を出し、食べ物を分解して吸収されます。
腸は腸神経系による自律運動をしています。
つまり、脳からの指令を受けずに独自で判断しているのです。
これが腸は第二の脳と言われる所以です。
体に入ってきた食物の情報をもとに自ら判断して、
消化がスムーズに行われるよう最適化しています。
●消化のプロセス
消化の過程で、食べ物に含まれるたんぱく質、脂質、糖質などを
酵素を用いて分解し、アミノ酸、脂肪酸、グルコース等を生成します。
なぜ、このプロセスが必要なのでしょうか。
細胞の構成成分は動物の種類によって異なるため、新しく細胞を作るには
一度たんぱく質を最小単位まで分解し、それを利用して自分の細胞を作る必要があります。
例えば、たんぱく質はアミノ酸が連なって出来ています。
魚や大豆のたんぱく質は人間の体内のたんぱく質を比べて、
アミノ酸の並びは同じではありません。
魚や大豆を食べて、それから体内の器官を作るたんぱく質として作る場合、
一度アミノ酸までバラバラに分解して、
新たに自分に合ったたんぱく質を作り直しています。
先程、分解する時に酵素を用いると述べましたが、
酵素はそれぞれの担当を持っていて、決まった物質に対して作用しています。
生物の種類によって食べるものが異なる。
人間は肉を分解する酵素を持っていないので、肉食は自然の摂理に反した行為です。
人間が肉食を続けると内臓を疲労させ、酵素を無駄に多く作るため
体の活動は低下します。代謝が滞り、これが病氣の元を作ります。
●蠕動運動
腸は独自で判断して蠕動運動を行っています。
腸管壁には神経ネットワークが張り巡らされていて、この指令のもと
筋肉が動いて、腸の下の方へ食べ物をゆっくりと移動させて、蠕動運動を行っています。
蠕動運動は腸独自の判断によって、セロトニンなどの神経伝達物質が
脳とは独立して放出され、活動をしている。
消化管の中のものは上から舌へ落下していくわけではなく、
単純に押し出されているのでもありません。
腸の神経網から信号を受取り、筋肉の収縮と弛緩をコントロールして、
食べたものをゆっくり運んでいます。
もう少し具体的にいうと、食べ物がある場所の少し先の方の筋肉が緩むと前に進みます。
そして、次にその筋肉が収縮することで、食べ物はさらに進み、これが繰り返されて
どんどん下の方へ移動していきます。
全ての脊椎動物には腸神経があり、その指令を受けて蠕動運動が行われています。
無脊椎動物の中にも蠕動運動をするものがいると言われており、
それだけ生物には必要不可欠な運動だということが分かります。
毎日、体は食べたものを分解・吸収して、不要なものを排泄します。
生きていくために必要な蠕動運動は、常に安定して機能する必要があります。
周囲の状況や自分の感情などに左右されていては、
体内の活動が十分に出来なくなるからです。
腸には、まるで脳からの干渉を拒んでいるような側面もあります。
その証拠に、自分の意思で腸の蠕動運動を止めようとしても出来るものではありません。
宿主の意向に関係なく、日々自らの役割を果たし続けているのです。
●腸のバリア機能
腸は体内の免疫の70%を担っています。
内なる外とも呼ばれる消化管では、外部からの細菌やウイルスなど
体にとって異物と接することも多い場所です。
腸では3種類のバリア機能が働いて、体を守っています。
①腸内フローラが病原性の高い菌を排除する
②腸の上皮細胞が強く結びつき、物理的に防御壁となっている。
③腸の粘膜細胞が粘膜層を作り、抗菌の役割をしている。
これらのバリア機能が備わっていて、異物は簡単に入れないように出来ていますが、
生活習慣の乱れやストレスなどによってバリア機能が崩れてしまいます。
暴飲暴食や偏った食事、薬の使用などが腸内のバリア機能を崩す原因です。
腸管粘膜のバリア機能が壊されると、免疫系が異常を起こして
食物アレルギー、潰瘍性大腸炎やクローン病など腸の炎症、感染症など
様々な病氣を引き起こしてしまいます。
また、リーキーガット症候群のように腸の粘膜に穴が開くと
「腸内の未消化物、細菌、ウイルスなどが血中に漏れ出します。
腸壁に穴が開くと、通常では吸収されないものが腸管壁を通過して血液へ入ります。
すると、体は異物と見なして免疫機能が発動し、異物に対応する抗体を作ります。
それによって食物アレルギーや自己免疫疾患など免疫異常が起こります。
さらに腸内で細菌が発生する毒素や有害物質も体に入り、慢性の炎症を起こして
動脈硬化や慢性肝炎などになるリスクが高くなります。
●子どもの腸も危ない
腸内環境を整えることは、子どもの成長にも大きく影響します。
しかし、お母さんのお腹の中にいる時から化学物質を浴びている現代では、
子どもにとっても腸内環境を健康に保つことが難しくなっています。
それによって、子どもの心の成長を妨げてしまいます。
自閉症の子どもに最も多くみられる健康上の問題は胃腸障害と言われています。
<米国疾病予防管理センター>
自閉症児に起きる慢性的な下痢や便秘は
健常児よりも3.5倍以上も多いという報告がある。
_<米国アリゾナ州立大学>
自閉症児の便を採取して分析したところ、腸内細菌の種類が非常に少ないことが分かった。
健常児と比べると種類も数も大きく異なる。
他にも、イタリアの科学者が自閉症患者の腸を調べたところ、
血液中のエンドトキシンの量が著しく高いことが分かりました。
エンドトキシンとは、腸内細菌が生み出す毒素のことです。
これが血液中に漏れて全身に巡ると、慢性の炎症を起こします。
エンドトキシンの量が多い自閉症患者ほど、症状も深刻でした。
腸内環境の良し悪しが心の状態にもあらわれるのは、大人も子どもも同じです。
子どもが成長していく過程は、大人として社会に出るための準備期間でもあります。
子育て中の方は、子どもが健やかに心身が発達するよう
玄米菜食の食事をさせてあげてください。
食べたものが体に吸収されるまでのプロセスにおいて、消化管は働いています。
先にも述べましたように、腸は食べたものの成分などを分析しています。
最適な状態で消化する力を持っている腸ですが、
暴飲暴食をしたり、食べ過ぎの食生活をしていると、体内は混乱してしまいます。
燃料を無駄使いすると乗り物は故障したり、長い期間乗れなくなります。
人間の体も同じように食べるものを間違えたり、食べ過ぎていると
不定愁訴に始まり、やがて命に関わるような病氣を引き起こします。
体は少々無理をしても、疲労や炎症を回復させようと働きますが、
それも度を過ぎれば体は故障してしまいます。
玄米菜食の食事は腸内環境を整え、免疫力を上げてくれます。
病氣になる前に、病氣を遠ざける食事を習慣にしましょう。
山本和佳