・文明の発展と微生物の排除
・現代病の発端の理由
・お母さんから腸内細菌をもらう
現代の便利な生活は、恩恵を受けている部分も多いですが、
微生物との共存という点においては、むしろ退化していると言わざるを得ません。
なぜかというと微生物が人間社会から極端に排除された結果、
様々な問題を抱えることになってしまったためです。
今回はその事についてお話し致します。
●微生物が排除された背景
現代人にアレルギー性疾患や自己免疫疾患(いずれも免疫異常)が激増していますが、
最初に出現したのは1800年代初めのことでした。
様々な化学物質が世界で初めて登場したのは1800年代半ば~後半でしたので、
免疫異常による現代病は、化学物質が出てくるよりも前にありました。
では、どのようにして免疫異常による現代病が出てきたのかというと、
それには産業革命が関わっていると考えられています。
産業革命が始める前は、ヨーロッパのほとんどの人は農民でしたので
土に触れる生活を送っていました。
1760年代に産業革命が起きると、多くの人が農村から都市へ移り、工場の労働者になりました。
さらに都市が整備されると、交通手段は便利になった一方で
土に触れる機会は減り、微生物との接触も激減したのでした。
その頃からアレルギー性疾患、自己免疫疾患といった
免疫異常による病氣が表れ始めたのです。
現代病が発生した最初の原因は、人間が微生物を排除したことから始まっています。
そして、化学物質(食品添加物、農薬、洗剤、放射能、薬品、ワクチンなど)
や環境汚染が、微生物の排除により一層拍車をかけました。
このように、人間は文明の発展とともに微生物を排除してきました。
産業革命以前は寄生虫や病原菌、常在菌との接触が多かったため、
感染症にかかって亡くなるリスクも高かったです。
ただ、当時の人達は体内に侵入した寄生虫や病原菌を排除したり、
体内で起きた炎症を制御する力の強さも持ち合わせていました。
高い免疫力を保ちながら、正常に働いていたため
当時は免疫の過剰や暴走して起きる病氣はありませんでした。
微生物を排除したことで、かつて接触していた微生物による
感染症で亡くなる人は減少しましたが、免疫を適切に調節する力も失われてしまいました。
●お母さんから腸内細菌をもらう
腸内細菌は、その人の健康状態を示すほど大切なものです。
では、どのようにして腸内細菌叢ができるのでしょうか。
お腹の中にいる赤ちゃんは無菌の状態で、まだ腸内細菌を持っていません。
生まれてくる時に産道を通って、膣内で腸内細菌に触れます。
この時に、まずお母さんから腸内細菌をもらいます。
生後数時間後には赤ちゃんの腸内細菌が確認され、さらに増えて
数日後には1gにつき1000億個もの腸内細菌が生息していると言われています。
お母さんの腸内環境は、そのまま赤ちゃんへ影響します。
生まれてきた時に多くの善玉菌に触れられると、菌の恩恵を受け取ることが出来ます。
しかし、もしお母さんの食習慣や生活習慣がが乱れていたら、どうでしょうか。
お母さんの腸内は悪玉菌が多い状態のため、
赤ちゃんは生まれてすぐに悪玉菌のシャワーを浴びることになってしまいます。
お母さんの腸内環境の良し悪しによって、赤ちゃんの腸内細菌叢も変わってしまうのです。
自然に沿った生活をしていれば、妊娠から出産のプロセスは
赤ちゃんが健康で丈夫に育つためのベースを作る、素晴らしいしくみが働きます。
妊娠期間が終わる頃には、妊婦の膣内ではグリコーゲンの分泌が増え、
乳酸菌が増加して、生まれてくる赤ちゃんに腸内細菌を渡す準備が行われます。
また、妊婦の乳頭にはビフィズス菌が常在していて、母乳を飲んでも飲まなくても
赤ちゃんはビフィズス菌を取り込むことが出来ます。
そして母乳にはオリゴ糖が含まれていて、その消化に関わっているのもフィズス菌です。
つまり、新生児の腸内では善玉菌を優先的に増やすよう働きかけるのが
本来の姿ですので、お母さんの腸内細菌が良好であることが大変重要です。
3歳までの乳幼児の時期は、特に色々なものに触れたがり、何でも口に入れたがる時ですが、
身の周りの環境から微生物を摂り込んで、外界と一体になろうとする無意識の行動と
考えられています。
幼児期に確立された腸内細菌叢は、その人の生涯にわたる健康状態、体の丈夫さ、
病氣にかかった時の体の反応など、基本的な部分を決定づけるほど重要なものです。
生まれてきた赤ちゃんに腸内細菌を渡して、元気に成長するよう
サポートするしくみがお母さんの体には備わっています。
そのため、お母さんは早くから腸内環境を整えておくことが大切です。
●免疫力が低下した現代人
地球上に生きている者は皆、もちろん人間も微生物と共に生きています。
体内に常在している菌やウイルス、寄生虫と連携しないと
正常な免疫機能を維持することは困難です。
戦前の日本人は、ほとんどの人の体内に寄生虫が存在していました。
この寄生虫は免疫系をコントロールする働きがあり、過剰な免疫反応を抑えていました。
ほとんどの現代人には免疫に貢献する寄生虫がいなくなったため、
免疫のコントロールにおいてハンデを負い、免疫が暴走しやすい状態になっています。
そのため、本来は反応しなくて良い花粉や食べ物などに対してアレルギー反応が出たり、
自分の細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患を患う人も増加しました。
●微生物の役割
微生物は自然界において、主に以下の役割を全うしています。
①不要なものを分解する
「不要なもの」とは死んだもの、傷んだもの、不自然なものを指しています。
微生物は役割を終えたものや不自然なものを分解しようとする一方で、
健康なものや自然界にとって必要なものに対しては、分解する働きかけはしません。
②有機物を分解する過程で、様々な毒素を浄化する
発生する毒素が少量であれば、微生物は分解することが出来ます。
ただ、現代は毒素(農薬、化学肥料、化学洗剤、食品添加物、薬品、放射能など)の量が
増え過ぎてしまい、微生物が分解できる能力をはるかに超えています。
③有機物を分解し、植物へ養分を供給する
落ち葉、動物や昆虫などの死骸が分解されて、養分となり土に還ります。
わたし達の目では微生物を直接見ることは出来ませんが、
微生物が確かに存在していて、その働きを見ることは可能です。
醤油、みそ、納豆、梅干しなど日本にはたくさんの発酵食品があります。
発酵は微生物によって行われ、それを食べて健康な体を維持してきました。
腐敗は人間にとって都合が悪い面もありますが、
これも微生物によって行われる、自然界から見れば必要なプロセスです。
自然の摂理に沿った食事や生活リズムは微生物にも喜ばれ、
共存していくために必要不可欠です。
山本和佳