・空腹の効用
・少食でもお腹が減らない?
現代では飢え死にする心配はありませんが、
食べ過ぎで命を落とすこともある時代です。
飽食に慣れてしまった現代人は、空腹に恐怖を感じるかもしれません。
しかしその恐怖感を手放すと、思わぬ形で健康な生活を送る事が出来ます。
●空腹の効用
飽食の現代では、起きている間は空腹状態の時間がほとんど無いという人もいると思います。
1日に3食の食事をして、さらに間食や夜食を食べていたら、空腹になる暇もありません。
これは危険な食習慣で、体の中に病気の巣を作るようなものです。
2000年にアメリカのマサチューセッツ工科大学のL・グァレンテ教授が
人間も動物も飢餓状態になると、細胞の中のサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)が活性して
病氣を予防し、健康長寿になると発表されました。
飢餓に直面すると体の力が呼び覚まされると、大きな話題になりました。
また、空腹時にはグレリンというホルモンがたくさん分泌されて、
以下のような効果をもたらします。
<グレリンの効果>
・食欲を増進する
・心肺機能の促進
・自律神経の調整
・抗ストレス作用
・脳の海馬の血行を良くして記憶力向上、物忘れ予防
野生動物はお腹が空いたら、獲物を捕りに行きます。
獲物を追って捕らえる時には多くのエネルギーを使いますので
空腹状態がいざという時に発揮する力を作り出していると分かります。
人間も長い歴史の中で、飢えている時間が圧倒的に多かったです。
空腹だったからこそ、頭が冴えて便利なものを作るアイデアや工夫が生まれ、
文明が発展してきたとも言えます。
現代人は食べないと(空腹状態だと)元氣が出ないと思っている人が多いですが、
実は逆で、食べ過ぎるから体を悪くしているのです。
●空腹で免疫が上がる
空腹の状態になると、血液中の糖・たんぱく質・脂肪・ビタミン・ミネラルなど
営養分の量が少なくなります。
この時、血中を流れている免疫細胞である白血球も空腹になります。
すると、体外からの病原菌や体内で発生したがん細胞や老廃物などを
盛んに貪食するようになります。
つまり免疫力が上がりますので、風邪やインフルエンザにかかりにくくなります。
反対に食べ過ぎると、逆のことが起こります。
糖分の摂り過ぎによって、食後は血中に糖分が急増します。
するとインスリンの過剰分泌が起こるのですが、それが長期間続くと
インスリンの分泌が減ったり、インスリンが効かなくなって
糖尿病になってしまいます。
食べ過ぎの食生活が病氣を作り出しているのです。
●空腹を感じなくなる
普段からたくさん食べている人にとって、空腹は耐えられないくらい辛いものと
思われるに違いありません。
しかし、少食の人は空腹に我慢しているわけではなく、
むしろ元氣に日々の活動に勤しんでします。
空腹を感じても食べないでいると、徐々に空腹感が消えていきます。
これは体内に蓄えられたエネルギーが血中に戻って、ゆっくりと血糖値を上げるためです。
こうして空腹を感じなくなり、むしろすっきりとした感覚もあるため
1日3食から2食に減らしても元氣でいられます。
そしてエネルギー効率も上がるため、肥満の予防や改善の効果が期待できます。
●噛むことと食欲の関係
噛むことも、食べ過ぎを抑えるために有効です。
実際に減量して体調不良を克服した事例がありますので、ご紹介します。
アメリカの時計商人ホイレス・フレッチャー氏(1840~1919)は、
肥満による体調不良を見事に克服した人物です。
彼は体重が100kg近くもありましたが、運動をすることは無く、
美食を堪能する贅沢な暮らしをしていました。
40歳頃には、毎日だるさを感じるなど体に不調が出ていましたが、
それでも食べ放題の生活を続けていました。
当然のことながら症状が良くなることはなく、
不安になったフレッチャーは、精密検査を受けたところ
医師から様々な病氣にかかる可能性があると言われました。
そんな折、ある人から勧められたのが噛む健康法でした。
方法はとてもシンプルで、「本当にお腹が空いた時だけ食べる事」と
「よく噛んで食べる事」の2つを守ることでした。
フレッチャー氏はこの約束を守って5ヶ月継続して、見事に30kgの減量に成功しました。
さらに体調も回復して、意欲的に外で運動するようになりました。
この経験から、彼は晩年に世界中を回って噛む健康法を提唱しました。
食事の時間を一定にする事も大切ですので、
十分にお腹を空かせて食事を始められるよう、食べる量を調整しましょう。
●噛むことによって内臓脂肪を分解する
噛むと満腹感を感じやすくなると言われますが、
さらに内臓脂肪の分解を促進しますので、メタボの人や予防したい人は是非お試しください。
よく噛むと、体内で酸素の消費量が急上昇して体が温まり、
全身のエネルギー代謝が促進されます。
この時、体内で蓄えられている脂肪がエネルギーとして消費されます。
噛まないで食べると、満腹中枢が作動しないため食べる量が過剰になって、
余分な脂肪や糖分などが体に溜め込まれてしまいます。
よく噛むと脳に刺激が届いて、神経性ヒスタミンが量産されます。
これにより満腹になったと伝達され、交感神経の中枢に働きかけて白色脂肪の分解を促します。
白色脂肪は特に下腹部、お尻、太もも、背中、腕の上部、内臓の周りに多く、
体内に入ってきた余分なエネルギーを中性脂肪として蓄えます。
40代以降に脂肪がつきやすい場所でもありますので、
脂肪の貯め過ぎにご注意ください。
●噛まないと太る
インスタント食品、ファーストフード、コンビニ食品など
ほとんどの加工食品は、噛まなくても食べられます。
摂取したカロリーは摂り過ぎていても、満腹を感じにくく
氣づいたら太っていたという事も起こりやすいです。
噛まないで食べられるものは消費量が増えるので、
食品メーカーもその点を分かって製造しているのかもしれません。
歯が生えている生き物は、噛む欲求を持っています。
そのため、噛み足りないとどんどん食べたがるように、
なかなか満たされない欲求の代替え行動とも言えます。
大食する人は、様々な面で無駄を増やしています。
多く食べると時間の面でも経済面でも負担が増えます。
活動が低下して、体を動かすのが億劫になります。
さらに俯瞰して見ると、食べ過ぎは地球環境に多大な負荷をかけています。
1980年から2000年の間に約1億ヘクタールの熱帯雨林が失われ、
その多くが牛の放牧や飼料を生産するためのものでした。
世界中の農地の約8割は家畜の飼料生産のために使われています。
森林が激減している一番の原因は肉食にあります。
飽食生活はやけ食いのように場当たり的な行動を引き起こして、
行動範囲も視野も狭くなっていきます。
衝動的に食べることで、一瞬の快楽を得るかもしれませんが
しばらくすると、また食べたくて我慢出来なくなります。
食べ物に振り回される生活は、時間を無駄にして
何より大切な自分の健康も脅かされます。
少食(適正な量を食べる)をすると、活動する意欲がわいてきます。
野生動物が飽食することなく、草原を走ったり大自然の中で生き抜く姿は
自立した生物の本来の生き方を示してくれています。
お金を払えば何でも手に入るようになった時代ですが、
健康を手に入れるためには、お金をかけない自分を律する行動も大切です。
山本和佳