玄米の中にフィチン酸という成分があります。
フィチン酸は、ミネラル欠乏症を引き起こす?体内のカルシウムが不足しやすくなりカルシウム不足や骨折がしやすくなる?
そういう風に言われる一方で、強い抗ガン作用がある、農薬や化学物質などを排泄する力がある、肝臓や糖尿病には欠かせない、などなど…フィチン酸について、賛否両論の意見があります。
良くも悪くも云われるフィチン酸ですが、本当のところは一体どうなのでしょうか…。
【フィチン酸とは】
フィチン酸は別名「IP6」と呼ばれている、ビタミンBの仲間で、イノシトール(I)を中心にして、リン酸(P)が6個、エステル結合(くっつくこと)をした「糖」の一種です。
(フィチン酸、イノシトール、リン酸については以前の記事をご参照下さい。)
今回は、フィチン酸問題の解決の糸口になる酵素フィターゼについてお話したいと思います。
私たちは生きるために食べ物を食べます。
その食べ物に含まれるミネラルといった各種栄養素を摂取するためです。
食べた物は小腸内で吸収され、栄養を摂取します。
小腸で吸収されたものが私たちの生きる糧となります。
ですが、小腸で効率よく栄養を摂取するためには、食べたものを分解し、消化する必要があります。
食べたものを分解するために口(歯や顎など)があり、分解したものをより小さくするために胃や十二指腸から出る消化酵素でさらに細かく分解され、そして小腸で吸収できるほど十分に分解されたものが私たちの栄養となります。
けれど、前回お話ししたように、フィチン酸の中にあるリン酸が、各種ミネラルをくっつけてしまう働きがあるため、フィチン酸にミネラルがくっつき、小腸で吸収できないほど大きくなってしまうと、それは栄養として吸収されず排泄されてしまう…。
このため、冒頭でもお話しましたように、玄米を食べるとミネラル欠乏症を引き起こすと言われています。
ですが、日本古来よりずっと玄米を食べてきました。
そのために日本人にはそんなフィチン酸にも対処できる体につくられています。
フィチン酸により、ミネラルがくっついてしまうと、消化できない状態、つまり、分解されにくい状態になります。
消化吸収できなければ、せっかくのミネラルも無駄になってしまいます。
ですが体は、長年食べ続けてきたものを消化し、栄養として吸収できるように作られています。
フィチン酸によりミネラルがくっついてしまい、消化しにくい状態のものを消化しやすい状態にする仕組みがあります。それに、フィターゼと呼ばれる酵素が関係しています。
脱リン酵素とも呼ばれるフィターゼは、フィチン酸の中心核「イノシトール」にくっついている6個のリン酸を全部切り離してしまいます。
アンキレートと呼ばれる作用です。
こうして、フィチン酸が分解されることで、キレートされていたミネラルや、イノシトールやリン酸がそれぞれバラバラになり、バラバラになることで小さくなり、そのために消化されやすくなるので、小腸から栄養として吸収されやすくなります。
さらに、分解されたIP6(フィチン酸)は、体内にあるイノシトールひとつと組み合わさり、IP3(リン酸が3つ)の組み合わせが2組できます。
このIP3は、抗ガン作用、免疫の強化、循環器系の病気のリスク低下など、多くの効果が発見されています。
(米国のメリーランド大学医学部病理学のシャムスディン教授の研究データより)
玄米に、強い抗がん作用がある理由のひとつには、フィチン酸が深く関わっているようです。
(つづく)
川野 ゆき