・どうぶつの寿命
・陸上どうぶつに必要なリン
・腎臓の排泄機能に頼りすぎると危険
前回に引き続き、腎臓についてお話し致します。
老廃物を濾過する重要な働きがありますが、そのためダメージを受けやすい臓器でもあります。
簡単には悲鳴を上げないため、病状が進行しやすいとも言えます。
●どうぶつの寿命
どうぶつはそれぞれ種類ごとに、だいたいの寿命が決まっています。
陸上で生きているどうぶつの、それぞれの種類による寿命は、何によって決まるのでしょうか。
よく言われるのは、体の大きさです。
例えば、ねずみの寿命は約3年、うさぎは約10年、ひつじは約20年、象は約70年。
この並びを見ると、体の大きさと関係があるようにも見えます。
しかし、こうもりは小さい体ですが、長くて約30年生きます。
そして人間は象よりずっと小さな体で健康なら80年、90年以上生きます。
体と寿命の長さに関連が無いとすれば、いったい何が寿命を決めているのでしょうか。
それは腎機能の高さです。
もう少し具体的にいうと、過剰なリンを排泄する機能です。
リンは人体に欠かせない物質ですが、摂り過ぎると腎機能の低下、動脈硬化など
病氣を招くことになります。(詳しくは後述します)
血中のリン濃度が高いどうぶつほど寿命が短く、逆にリン濃度が低いどうぶつは寿命が長い。
リン濃度が低いとは、排泄機能によって調整する力が高い状態を表します。
体内にリンを溜めやすいか、それともリンをちゃんと排出しているかどうかが寿命を決めています。
●リンが体を老化させるしくみ
腎臓では1日に160Lもの原尿(尿に濾過される前の状態)が作られていますが、
普段からリンを多く摂取していると、原尿中のリン濃度が高くなり、
腎臓の中でリンを取り除く濾過装置にダメージを与えてしまいます。
腎臓は年齢とともに衰えていきます。それに加えてリンを過剰摂取していると、
加速的に腎臓の機能が低下していきます。
そのため、氣づかないうちに慢性腎臓病まで進行する場合もあります。
腎機能が低下して、リンを排泄する能力が徐々に落ちてくると、
体内にリンが溜まりやすくなります。
すると、今度は血中のリン濃度が高くなり、全身に回って炎症を起こし、
動脈硬化、脳卒中、心臓病など病氣を引き起こします。
ここでリンについて少しお話し致します。
リンは人間が生きるために欠かせない、体を構成している重要成分です。
骨を維持するという重要な役割があり、体内にあるリンの約80%は骨に存在しています。
他にもリンは全身の細胞成分として、細胞内のDNA成分として使われたり、
さらに生命の活動エネルギーを作り出すATPサイクルにもリンが使われています。
このように体に重要な働きをしているにも関わらず、体内の骨以外の場所でリンが増えると、
老化を加速させたり、病氣の原因を作り出す危険物質に変わります。
●陸上で生きる宿命
では、なぜ人間を含めた陸上どうぶつはリンを必要としているのでしょうか。
まずは体内のしくみについて、少し触れてみようと思います。
人間の血液の成分と海水の成分は酷似しています。
人体を構成する成分も海水成分に近く、構成する元素の配分が多少異なるものの、
使われている元素はほぼ同じです。
そうした中で両者に大きな違いがあり、人体にはリンの比率が目立って高い特徴があります。
この違いは何を意味しているのでしょうか。
海の中と違って、陸では重力を受けているため、体をしっかり支える構造が必要です。
海の中を泳ぐ魚は背骨はやや太く、全体的にしなやかで細い骨も多いです。
それに対して陸上へ上がったどうぶつ達には、固くて丈夫な骨が必要でした。
陸上の重力にあらがって、骨を支えなくてはなりません。
。
重いものを持ち上げたり、動き回ったりと陸上環境に適応するために
リンを蓄えるようになったと言われています。
●腎臓の排泄機能の限界
食べ物に含まれているリンは消化吸収されて血中に入り、全身を巡った後、腎臓へ運ばれます。
その一方で、骨には腎臓に運ばれてくるリンを見張るような役割もあり、
リンが多くなると、リンの排泄を促すホルモンを骨から分泌します。
そのホルモンの指令を受けて、腎臓は速やかにリンを排泄します。
リンは多くの食べ物に入っているため不足することはまず無く、とても過剰になりやすい物質です。
日本で普通に暮らしていると、知らないうちに必要量の3倍ものリンを摂取していると言われています。
リンを摂取し過ぎても腎臓が排泄してくれるから大丈夫と思われるかもしれませんが、
残念ながら、そういうわけにはいきません。
血中のリン濃度が高い状態が続くと、腎臓に大きな負担をかけ、
リンの排泄機能にダメージを与えてしまいます。
リンは体内で高濃度になると、危険な物質に変化していきます。
骨の成分は約70%がリン酸カルシウム、残りはコラーゲンと水分です。
そして骨はその強度を保つため、日々作り替えられています。(新陳代謝)
古い骨は溶かされ、リンとカルシウムが血中に出ていきます。
また、新しい骨を作る時には血中のリンやカルシウムを取り込みます。
このように、体内では骨を溶かしては作るという繰り返しが至る所で行われています。
リンとカルシウムは、とても結びつきやすい性質を持っています。
これは、必要な時にどの部分の骨も作り替えられるようになっているためと言われています。
リン酸カルシウムは、骨に収まっている時は問題ありませんが、
血中や骨以外の場所でリンとカルシウムがくっつくと、体に悪さをするようになります。
まず血中のリン濃度が高くなると、リン酸カルシウムが増えます。
そして血中などに溶けているリン酸カルシウムは、固体に変わりやすい性質を持っています。
リン酸カルシウムが固体に変わり、それがタンパク質と結びつくと、
CPP(リン酸カルシウム血症のコロイド粒子)に変化します。
CPPは直径1マイクロメートル(1mmの1000分の1)以下の非常に小さい粒子で、
体内でリン濃度が高くなると、発生しやすくなります。
血中のリン濃度が高くなると、CPPが増えて血液に乗って全身を回り、
至る所で炎症を起こし、老化を加速させ、様々な病氣を引き起こします。
腎臓に負担をかけない生活をすることは、健康で長生きするための必須条件です。
この続きは、次回にお話し致します。
山本和佳