・生命の進化と金属の関係
・陸上へ進化するために背負ったリスク
海水と人間の体内は、元素の組成がよく似ています。
生物の体内にある量から、大きく多量元素と微量元素に分かれます。
微量元素とは、体内の含有量が鉄よりも少ない元素を指します。
人間にとって必須微量元素は鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、コバルト、
クロム、セレン、モリブデンの9種類です。
微量元素全体でも体の組織の0.02%しかありませんが、
酵素反応や酸化還元の働きに影響を与えています。
●生命の進化と金属
海水中の鉄が当時のシンプルな構造の有機化合物と結合して、
金属たんぱく質や金属酵素を作ったとされています。
それによって、生理作用が増幅して、分子進化しました。
当時の粕井には鉄イオンがたくさん溶け込んでいたと考えられています。
銀イオンが過酸化水素を活性する度合いを1とすると、
鉄イオンとポルフィリン(有機化合物)から出来たヘム鉄は1000倍になり、
さらにそこへタンパク質が結合したカタラーゼ(酵素)は100万倍以上も活性します。
タンパク質や酵素の一部になることで、金属の生理作用が飛躍的に増幅していきました。
こうした分子進化の積み重ねが、生命の進化と深く関わっていたのです。
生命の進化の過程では、還元力のある金属から使われていたと考えられています。
もともと地球上には酸素の量が少なかったことから、
環境に合わせながら、生き残るために体のしくみを変えてきたと分かります。
必須元素も過剰になると病氣など異常を引き起こします。
その例として、リンを取り上げたいと思います。
リンは体にとって重要な働きをする、生きものにとって必要不可欠な元氣の1つです。
体内にあるリンの80%は、骨の成分として使われます。
また、全身の細胞膜の成分にもリンが使われ、細胞内のDNAにもリンは使われています。
さらにエネルギーを生み出すATP, サイクルにもリンは必要不可欠です。
このように、全身に影響を与える
無くてはならない元素ですが、中でも骨を維持する役割が大きいです。
しかしその反面、体内の骨以外の場所で過剰になると、危険物質に変化します。(老化の促進)
先程も少し触れましたが、血液や体液などを含めた人体の元素と
海水の元素の組成はよく似ています。
しかし、リンの量については海水よりも人間の体の方が飛び抜けて多いです。
(体内元素の人間は7位、海水は10位以下)
なぜ人間の体には、海水よりもたくさんリンがあるのでしょうか。
海で誕生した生命が進化する過程で、リンを蓄える術を身につけたと考えられています。
リンの大きな役割は骨を維持することです。
海では浮力を使って移動できますが、陸上では重力がかかるため、
体をしっかり支える仕組みがどうしても必要です。
それには、硬くて丈夫な骨を何としても手に入れたかった。
だから、陸へ上がった生物は、骨にリン酸カルシウムという形で
リンを蓄える仕組みを身につけて、陸上を動き回れるようになったのです。
しかし、その一方で大きなリスクを抱えることになってしまいました。
体内にたくさんリンを抱える事により、老化が加速して
寿命が短くなるという宿命も受け入れなければならなかったのです。
どうぶつは種類ごとにだいたい寿命が決まっていて、
これは血中リン濃度と相関関係があります。
血中リン濃度が高い動物ほど寿命が短く、逆に濃度が低いどうぶつほど寿命が長いです。
ではリンの量と寿命の関係について、少し詳しくお話しします。
骨の70%はリン酸カルシウムから出来ています。
骨は常に古いものが壊されて、新しいものが作られる入れ替わりが繰り返されています。
リンとカルシウムはとても結合しやすく、骨の中にある時は良いのですが、
血中のリンが過剰になるとそこでカルシウムと結合します。
通常、水に溶けている物質が勝手に固体になることは体にとって危険なのでありませんが、
リンとカルシウムはいつでもどこでも結合しやすい。
これは全身のどこでも必要な時に骨を作れるためと考えられています。
しかし、これは危険と隣り合わせです。
現代人は知らないうちにリンを摂り過ぎています。
肉類や加工食品には、体に吸収されやすいリンがたくさん含まれています。
肉食は倫理的にも問題があるので、食べるのは論外ですが
リンの問題から見ても、体に取り込んではいけません。
また、酸素は体内で2番目に多く存在する必須元素です。
酸素もまた、生命の進化の過程で積極的に取り込むようになりました。
陸上の生物は、呼吸で酸素を取り込みエネルギーの材料として使います。
一方、酸素は細胞を殺す力を持つ危険な氣体でもあります。
様々な物質と結合しやすい性質があり、金属がサビるのも
物が燃えるのも、細胞が老化するのも、全て酸素が引き起こす酸化現象です。
もともと、太古の地球には酸素はほとんど無く、嫌気性の細菌が
酸素を使わずに生息していました。
その後、太陽光と二酸化炭素からエネルギーを生み出す藻類が登場し、
大氣中の酸素が増加しました。
この時に環境の変化に対応できず、死んだ生物も多かったと言われています。
海水中の微量な酸素を利用してエネルギーを作っていた、一部のバクテリアは
単細胞生物の中に入って、細胞内のミトコンドリアへ変化しました。
それによって危険な酸素を利用して、大きなエネルギーを作り出すようになりました。
呼吸するだけでも活性酸素が発生します。
活性酸素は体の炎症を引き起こす要因ですので、
いかに体内で活性酸素を作らないかが病氣の予防に繋がります。
抗酸化力の強い食事(野菜、海藻類、魚介類、果物など)をして、
逆に酸化しやすいもの(肉、精製したもの、加工食品など)は控えましょう。
ミクロの世界を見ると、色々な発見があります。
食事の後、食べたものが体の中でどうなっているのか、
どうやって骨が作られているのか。
わたし達が意識していてもも、してなくても体は働き続けます。
進化と共に身につけた体のしくみに合った
生活を送る事が、健康であり続けるためにも大切です。
山本 和佳