一般無料「アミノ酸と味覚」健康基礎講座

・人間の味覚

・母乳と人工乳

・アミノ酸の味

 

●人間の味覚

わたし達は毎日の食事で様々な味を感じとぅています。

舌の味細胞では甘味、塩味、酸味、苦味、旨味(五味)を感じ分けます。

旨味と聞くと、少し曖昧なイメージがあるがしれませんが
旨味はグルタミン酸などのアミノ酸、イノシン酸、グアニル酸など
核酸関連物質が味細胞に触れた時に感じる味です。

五味だけでなく痛覚を刺激する辛味、口腔粘膜の収斂で感じる渋味、こく、
味の広がり、香り、色、温度、光沢などを総合して味として捉えています。

さらにその場の雰囲氣や体調、氣分も美味しさを左右する大切な要素です。

他にも喉が乾いている時に水を飲むと、普段以上に美味しく感じます。

また、疲れた時には甘味を欲しがります。

温かい状態が美味しいものが冷めてしまうと、不味く感じることもあります。

美味しいという感覚は、それまでに食べたものの記憶、経験、知識なども含め
膨大な情報が合わさって脳で判断されます。

風邪を引くと、普段美味しいものも不味く感じるように味覚が変わりますが、
これは風味を左右する香りや他の繊細な感覚が鈍るためです。

また、食べものの味は意外なところにも影響しています。

味覚とインスリンの関係について調べた実験をご紹介します。

実験では、朝食を口に入れて飲み込んだ時と
口に入れて飲み込まない時の血中インスリン濃度を比較しました。

結果は、食べ物を飲み込むとインスリン濃度が上がりますが、
飲み込まない場合も同じように濃度が上がったのです。

舌の細胞が味を感じると、脳へ味の情報が送られて
脳からインスリン分泌するよう指令が出されます。

つまり食べものが口に入った時点で、体内では消化するための活動が始まっているのです。

味覚は美味しいものを味わうためのものと思われる事が多いです。

確かに人間社会ではそれも大事なことですが、
本来、味覚は食べてよいものと食べていけないものを区別するための
大切なセンサーの役割をしています。

先程の五味に当てはめると、

甘味はエネルギー源の糖質というシグナル。

旨味はタンパク質(アミノ酸)のシグナル。

塩味はミネラルというシグナル。

酸味は食べものが腐っているか否か、熟しているか否かのシグナル。

苦味は毒かあるか否かのシグナル。

それぞれの味から食べても大丈夫かどうかを判断しています。

人間は酢の物やコーヒー、ビールなどのように酸味や苦味を楽しむ習慣がありますが、
これは人間が築いた社会文化から生まれた嗜好品です。

しかし、自然界では苦味も酸味も危険な味ですから
野生動物は苦いものや酸っぱいものは食べません。

人間も子どものうちは苦味や酸味を嫌がる事が多いです。

ピーマンのように苦味があるものはまだ熟す前の状態で
植物の防衛本能として少量の毒素を持っています。

これは実が熟す前にどうぶつに食べられないようにするために
植物が身につけた生き残る術です。

子どもの頃はまだ味覚の本能的な部分が残っていて
苦味を強く感じやすいため、多くの子どもは食べたがりませんが
ほとんどは大人になるにつれて食べるようになります。

味覚は危険なものを体に入れないための防衛本能の面もあるのです。

 

●母乳と人工乳

生まれてから大人になるまで、味覚は変化していきます。

哺乳類の成長段階において、いつ頃から味覚が生じるのかについて
調べたラットの実験があります。

それによると、胎児の頃から味覚が機能していることがわかりました。

胎児は胎盤を通して営養を摂ると同時に、羊水に溶けた営養を口から摂取しています。

羊水も母乳も大部分はアミノ酸です。

人間の場合、味蕾は妊娠3ヶ月頃にはあると認められていますが、
この頃は顔の表面から胸の辺りまで広い範囲に分布していて
生まれる頃には舌の一部にまで範囲が縮小しするそうです。

生まれた後の環境に適応するため、必要な機能だけを残したのでしょう。

 

人間の母乳には遊離アミノ酸(タンパク質の合成材料ではないアミノ酸)が
多く含まれていますが、中でも特にグルタミン酸が多いです。

乳糖も多く含まれていますが、甘味はほとんどありません。

また、塩分濃度は血液の半分以下で塩味もほとんど感じられない。

人間の赤ちゃんは生後100~120日経過する頃までは塩味は分からないと
言われています。

母乳に含まれるグルタミン酸の濃度(mg/100ml)は種別によって差があります。

馬が8.4㎎、牛は1.9㎎、ウサギが4.6mg。

チンパンジーが38.9mg、人間は21.6mg。

哺乳類の中でも特に霊長類はグルタミン酸濃度が高いです。

母乳は旨味のほかに少し甘味も含まれています。

生まれて間もない人間の赤ちゃんは、旨味を感じながら母乳を飲んでいるのです。

天然のアミノ酸がたっぷり供給され、旨味も豊富な母乳は
人工乳と比べられるものではありません。

 

●美味しさを支える旨味について

日本人の味覚は繊細で、旨味を感じる鋭さもあります。

ヨーロッパなど世界各地でも、日本の五味のように味が分類されていますが、
旨味があるのは日本だけです。
(今では世界でもumamiとして認知されています)

日本では、昔から旨味を巧みに取り入れた食文化が根づいています。

旨味には相乗効果があり、アミノ酸系旨味物質と核酸系の旨味物質を
合わせて用いることで、単独で使うよりもはるかに強い旨味を生み出します。

旨味物質のグルタミン酸は、多くの天然食材にも含まれており、
植物性食品に多いです。

イノシン酸は動物性食品に多く、鰹節、いわし、あじ、マグロなどに含まれます。

グアニル酸は干し椎茸に含まれています。

和食では鰹節と昆布から出汁を取る場合も多く、旨味の相乗効果が活用されています。

野菜で味噌汁やスープを作る時も、何種類も食材を入れると
味の層が出来て、深い味わいが生まれます。

 

●アミノ酸と味

食べ物にに含まれるアミノ酸の種類や量は、食材の味に深く関係しています。

日本人の食事に欠かせない味噌や醤油など、発酵食品の美味しさの正体はアミノ酸です。

醤油にはグルタミン酸がたくさん含まれます。

昆布は高級とされる産地のものほど、出汁にグルタミン酸が豊富です。

トマトにもアミノ酸が豊富です。
トマトの味は主にアスパラギン酸、グルタミン酸、クエン酸、糖から成ります。

熟成が進んで赤く色づくほとクエン酸が減り、アミノ酸が増加します。

もしトマトの味からグルタミン酸が無くなると、薄いりんごジュース、
または酸っぱい梅ジュースのような味になってしまうそうです。

トマトは煮込んだりスープにすると、生で食べる時とはまた違う
深い味わいが出てきます。

トマトが様々な料理に使われている人氣食材ですが、
はグルタミン酸の旨味効果も手伝っていますね。

また、塩も味を決めるのに重要です。

アミノ酸だけでは味が弱い時に塩を加えると、アミノ酸の味が強く引き出されます。

出汁がその代表例ですね。

他にも塩には甘味を増強する作用もあります。

スイカやとうもろこしに塩を振って、
素材の甘味を堪能した経験はどなたにもあると思います。

 

自然界のアミノ酸は、分解や合成を繰り返して様々に変化して
体の中の必要な場所で重要な働きをしてくれます。

こんなに働き者のアミノ酸を積極的に体に入れたいと思うでしょう。

もし天然のアミノ酸の摂取量が足りていないなら、
味覚を修正する必要があるかもしれません。

舌は食べて良いかどうかを判断する重要な砦です。

加工食品を食べていると、人工的に作られた味に慣れてしまいますので
素材から調理したものを食べる機会を増やしましょう。

味覚を正常にする事は、病氣を遠ざけるためにも必要不可欠です。

山本和佳