一般無料「ヤングケアラー」健康基礎講座

●病氣は周りも巻き込む

●受け皿にされてしまう子ども達

●子どもの未来を奪わないために

 

1人が病氣になると、その周りの人の生活も変わります。

病氣が増え続けると大人だけでは支えきれず、
身の回りをお世話する仕事が子どもにも回って来ます。

数年前にヤングケアラーという言葉がメディアに出てから
その存在が世の中に知られるようになりました。

ヤングケアラーとは、大人が担うような家族の介護やお世話を
日常的に行っている子どものことです。

日本では18歳未満が対象とされていて、
年代別に見ると中学生の5~6%、高校生の約4%がヤングケアラーと言われています。

クラスに1~2人いる計算になりますので、これはなかなか多い数字です。

負担や責任の重さから、学業や学校生活に支障が出ているケースが
多いということが知られるようになってきました。

子どもが家族のお世話をすることは昔からありましたが、
ヤングケアラーという言葉で呼ばれるようになったのは比較的最近のことです。

2010年代後半に本格的な調査が始まり、2020年頃からメディアで取り上げられて
教育現場でも知られるようになりました。

病氣や障害を持っている親や祖父母の介護をしたり、
両親が共働きのため、幼い兄弟の面倒を見ている家庭もあります。

お世話している内容は主に以下の通りです。

・料理を作る、後片づけ

・掃除、洗濯などの家事

・食糧や日用品などの買い物

・介助(食事、入浴、排雪)

・病院へ付き添い

・愚痴を聞く(不安や怒りの受け止め役)

担っている仕事の範囲は家庭によって様々ですが、
大人が介護するのも大変なのに、それを子どもがしているのです。

学校へ通いながら毎日家の仕事もする生活は、主婦よりも負担が重いでしょう。

毎日お世話をしている子どもの1日当たりにかかる平均時間は
約4時間と言われています。

そのため部活や友人と遊ぶ時間を惜しんで、真っ直ぐ帰宅する子どもが多くいます。

 

●子ども達が抱えている壁

ヤングケアラーが抱えている問題は多く、しかも長期間に及んで
社会との間の大きな壁となっています。

〈学業への影響〉

・遅刻や欠席が多い
・勉強する時間を確保できない
・部活や課外活動へ参加を諦める

〈心身の疲労〉

・睡眠不足
・慢性的に疲れている
・不安やうつ、ストレス

〈社会的孤立〉

・人間関係を築きにくい
・自分の状況を理解してもらえる人がいない

〈将来について〉

・進学や就職の選択が制限される
・自分の人生を生きられないという感覚

 

学校へ通いながらの介護は相当な負担がかかります。

その日のうちにやらなくてはならない事が終わらない場合は
睡眠時間を削っている可能性もあります。

また、お世話などで忙しいと食事をインスタント麺などで済ませる事もあるでしょう。

睡眠不足に営養不足が重なり、健康や心身の発達にも影響が出てしまいます。

高校を卒業して、就職するまで介護が続くケースもあれば
中には長期化して大人になっても介護が続く場合もあります。

家庭の事情を理由に進学や就職を諦めざるを得なかったり、
短時間労働で勤務するなど働き方にも制限がかかりやすい状況があります。

他にも仕事に就きにくい理由として、学生時代に遅刻や欠席が多かったり、
進学や就職の準備がなかなかできなかったことも挙げられます。

経済的に不安定で無職だったり、一度は就職したが離職することもあるようです。

過剰な負担の弊害が、長期間に渡って子どもを辛い目にあわせてしまうのです。

 

●今まで表面化しにくかった

介護などのお世話の負担を抱える子どもがいる事が
実は周りの大人や学校の先生になかなか氣づかれない問題もあります。

それにはいくつか理由があります。

まず、物心ついた時からお世話するのが日常になっていて、
それが普通という感覚になっていること。

助けを求めようとしないで、自分だけで抱え込んでしまう。

さらには、家庭内のこととして隠されやすいということ。

家の中のことをあまり外で言わないものという概念が壁となっていたり、
中には介護されている親が、外で言わないようにと
子どもに言い聞かせていたケースもあります。

介護については学校で同級生と話題になりにくく、
家の事情を言語化する機会が無いため、孤独感を感じる子どももいます。

多感な時期に家の仕事に追われ、親に理解されたり氣にかけてもらえない事が
心の傷として残ることもあります。

 

最近では相談窓口を設けている自治体もありますが、整備されいるところはまだ少数です。

ヤングケアラーの支援団体もありますが、
実際には支援を拒否する家庭も多く、「家の中のことは自分達でやる」
「行政に関わってほしくない」と考える人が多いのが現状です。

また、子どもだけ支援しても親(介護される家族)も支援しなければ
状況は変わらず、ずっとお世話を続けなくてはなりません。

 

●子どもの未来を奪わないために

問題の本質は、子どもが家族のお世話をすること自体ではなく
日本全体で病氣が激増しているところにあります。

昔は1世帯あたりの兄弟が多かったため、お世話や家事を分担でしやすい環境でした。

近くに親戚が住んでいたり、近所の人との交流もあったから
人の目に触れやすく、手助けし合うのが常でした。

今はすっかり核家族化して、子どもが1~2人の家庭が多いことに加え、
近所付き合いが希薄になり1人に負担が集中しやすく、社会問題になっています。

 

母親が精神疾患を持っていて家事ができないため、
それを手伝うヤングケアラーもいます。

現代人にうつ病が増えていますので、このようなケースもあるのです。

病氣以外の事情でお世話をしているケアラーもいますが、
社会全体で病氣が増え続ければ、必然的にヤングケアラーも増えてしまいます。

働く世代だけでなく、子どもにも重労働な介護する生活。

特に子どもにかかる負担は社会から見えにくく、陰で苦しんでいます。

病氣は本人が苦しいだけではなく、
子どもの夢を奪い、将来の可能性さえ狭めてしまうものです。

病氣を少しでも減らすには、なる前に予防するのが鉄則です。

自律して心身を正しくケアする大人が増えると、病氣も減っていきます。

健康の輪を広げていきたいですね。

山本和佳